2013 Fiscal Year Annual Research Report
労働の場(site)を淵源とする権利義務の創出-契約外労働関係とその理論基盤
Project/Area Number |
25285018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野田 進 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90144419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中窪 裕也 一橋大学, その他の研究科, 教授 (90134436)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 労働契約 / 団体交渉 / 使用者性 / ネクサス / 企業 / 派遣労働者 |
Research Abstract |
平成25年度は、本研究における基礎的な理論枠組みを構築する年度であった。そのために、重点研究として、比較法の視点を確立するために、研究グループの各参加者の分担に応じて海外調査を実施すること、および、理論枠組みの構築のために、基礎理論的考を進め、それを文書化していく(できるだけ公表していく)作業を課題としていた。 これらの課題に応じて、平成25年度の主な研究実績として、次のような成果を上げることができた。(1)研究グループのうち3名は、イギリス(連合王国)において、オクスフォード大学のマーク・フリードランド教授、およびケンブリッジ大学のディーキン教授などとインタビューおよび意見交換をなし、イギリスにおける労働契約論の最先端の議論である、パーソナル・ネクサス論およびネットワーク論について、より深い知識を得ることができた。(2)同様に、2名は、アメリカ合衆国において、米国で海外調査を行い、特に、連邦労働省においては請負労働に従事者の労働者性問題、連邦最高裁や連邦議会議員会館においてレッドベター法についての説明を受けて、ヒアリング・意見交換をした。(3)1名は、オランダ・マーストリヒトにおいて、日系企業のヒアリングを行い、ヨーロッパにおける事業譲渡と労働契約問題について、実務責任者からのヒアリングをすることができた。(4)別表記載のように、主任研究員、研究分担者および研究協力者は、本研究に関して、それぞれ論文を公表しており、基礎理論構築のための理論的成果を挙げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の課題である、比較法研究の基盤形成については、イギリス、アメリカ合衆国、およびEUについて、実情調査により課題の析出を果たすことができたのに加えて、ネクサス論やネットワーク論等について、最先端の理論水準に関して、実地で研究討議を行うことができた。 また、第二の課題である、基礎的な理論についての成果の確認作業については、逐次、関連の論点について論文公表を開始しており、順調に理論基盤の形成が進んでいる。 これらを通じて、平成26年度の理論の深化と構築のために、おおむね順調に基盤形成を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の計画として、大別以下の2つのものを企画している。第一に、本テ-マに関する各国調査を引き続き実施する。特に、フランス、ドイツ、イタリアのヨーロッパ大陸諸国における法理の伝統と現代的課題が、中心となる。これらについて、労働法の専門誌に特集号を組む計画があり、積極的に取り組みたい。第二に、本研究テーマの応用編(各論)として、法律専門誌の労働法特集(おそらく平成27年4月号)で、現政権の労働法改革について分析・検討をする研究作業に取り組む。これら基礎理論編(総論)の構築と、応用編(各論)の展開により、本テーマの全体像を完成させ、新しい理論の潮流を形成していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、主任研究者が所属大学の執行部(副学長)に就任したり、研究分担者の一部が在外研究になったために、研究担当者がその業務に時間を割かれて、本研究に十分な時間を用いて従事することができなかった。そのために、本研究の中軸である、フランス、ドイツ、イタリア等の、ヨーロッパ大陸の実地調査に精力を注ぐことができず、また緻密な研究打ち合わせを実施するに至らなかった。 これらの理由から、研究活動および研究費の使途の面でやや遅れが生じ、そのために次年度使用額が生じたものである。 次年度は、本研究面での上記の問題(主任研究者の副学長就任、分担者の在外研究)は、いずれも解決される予定であり、研究は格段に伸長されることを予想している。具体的には、(1)ヨーロッパ大陸諸国の訪問調査を実施するとともに、研究資料を入手し、(2)英国の有力研究者を日本に招聘して講演会、研究会を開催することも予定しており、研究費の有効な使用が可能である。さらに、(3)専門誌における共同研究の特集も予定していることから、国内でにおける研究メンバーによる頻繁な研究討議の機会も必要である(次年度第1回を、5月17日(土)に予定している)。
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