2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
弥永 真生 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60191144)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 簡易監査 / 任意監査 / コンピレーション / スイス / スウェーデン / ノルウェー |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)中小企業における会計、(b)商法または会社法の下で中小企業に求められる開示、及び、(c)中小企業の計算書類の信頼性の向上のための社会的仕組みという、3つの重要な個別的問題について、本年度は、第1に、平成27年度に収集した資料及び本年度に行ったバーゼル大学への訪問調査ならびに議会資料に基づき、スイスにおいて、どのような議論と対応がなされてきたのかを調査・分析した。すなわち、スイスにおいては、通常の監査のほか、中小会社向けに簡易監査が選択な可能なものとされているが、これは、実施手続きの観点で通常の監査と異なるのみならず、他のサービスの同時提供の許容という点で異なることが明らかになった。そして、簡易監査は広く利用されているという点で、他の諸国には見られない状況がスイスには存在する。また、簡易監査の導入にあたって、議会及び議会の法務委員会では相当程度の議論がなされたことも判明した(法務委員会の議事録は非公表であるが、学術目的のため、特別な許可を得て、閲覧を行うことができた)。 第2に、スウェーデン及びノルウェーにおいては、立法的検討はなされたものの、デンマークのような拡張されたレビューという制度が導入されなかったこと、スウェーデンにおいてはReko(コンピレーション・サービス)及び任意監査が相当程度活用されていること、及び、ノルウェーにおいては任意監査が選好されていることが明らかになった。 いずれも、これまで、日本では紹介されたことがなく、かつ、コストとベネフィットとのバランスを図りつつ、中小企業の計算(会計)の質を高めるという観点から、日本法ないし日本の制度に対する示唆に富んでいるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは異なり、スイス及び北欧諸国を本年度は調査対象とし、カナダ、オーストラリア及びニュージーランドならびにイタリアを平成29年度に調査することとしたが、これは順序の入れ替えにすぎず、研究は着実に進捗している。ただし、幸運にも閲覧が許可されたスイスの議会委員会資料がかなり多かったため、そのメモから日本語での成果に結び付けるには若干の時間を要するものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、カナダ、オーストラリア及びニュージーランドならびにイタリアに調査に赴くほか、ブラジル及び連合王国についても補充的調査を行う。 第2に、平成29年度は最終年度であるので、これまでの収集した資料及びインタビュー結果に基づく、取りまとめ作業に取り組む。
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Causes of Carryover |
海外調査を予定していたが、勤務先で用事が頻発し、直前にキャンセルせざるを得なくなったことが複数回あったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度における、海外調査の予定回数を増加させる予定である。5月上旬に1回海外調査を行うことを追加した。
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