2015 Fiscal Year Annual Research Report
領土問題と漁業問題の交錯状況の克服:生活圏としての「領土」を巡る実証的研究
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25285054
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
福原 裕二 島根県立大学, 総合政策学部, 准教授 (30382360)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際関係史 / 領土 / 漁業 / 生活圏 / 北方領土・竹島・尖閣諸島 / 北東アジア / 韓国・北朝鮮・中国(台湾)・ロシア / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来より研究代表者が取り組んできた研究課題の新資料の発掘と入手、調査対象の多元化とその実現可能性とに鑑みて構想され、①日韓/日中(台)/日ロ両国政府・関係自治体のそれぞれの「領土」にまつわる取り組みと漁業に関わる政策の史的展開、②地域・人びとにおける公共財としての海洋の漁業秩序形成の在り方を考察し展望することを研究の目的に据えている。また、本研究は、4か年に渉って遂行される研究課題である。 その第3年度目にあたる平成27年度は、初年度より進めてきた新資料の獲得・精読・系統的再整理の継続、前年度より本格的に敢行している国内・国外におけるヒアリング調査の取りまとめと継続的な展開、そしてこれまでに得た調査研究の知見を整理・文字化して論文にまとめるとともに、各種学術会議において成果報告を行うなどの活動を展開した。そこでは、第一に、「終戦/解放」から国交正常化に至る日韓両国政府、同時期の地域行政の「竹島/独島の取扱」、その周辺漁業に対するアプローチなどに関して新たな知見を得た。第二に、「領土」あるいはその周辺海域を生活圏とする地域・人びとの経済活動の実態・現状についてデータ化を行った。第三に、漁業者及びその関係者、水産漁業経済研究者らにヒアリングを行った。第四に、国外調査の実施により北東アジア各国の「領土問題と漁業問題の交錯状況」の実態について把握した。第五に、本研究の遂行過程で獲得した知見の一部を単著や論文にまとめるとともに、各種学術会議において研究の成果報告を行った。第六に、他に関連する科研や大型研究プロジェクト(人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト「北東アジア地域研究推進事業」)との学術セッションを展開する目処がつくなど、学術交流・研究成果の社会還元の多様化において新たな方向性を得た。平成27年度は、概ね以上のような研究の成果が挙がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、大まかには収集史資料や撮影・録取記録の整理・データ化と、国内・国外調査の継続展開、本研究の遂行過程で獲得した知見の一部を単著や論文にまとめるとともに、各種学術会議において研究の成果報告を行うこととした。より具体的には、①国内ミーティング(研究情報の共有や意見交換)、②国内資料収集及び資料の分析、③国内調査、④海外調査、⑤研究成果の公表を計画した。 このうち、①~③と⑤は想定外の事態もなく、当初の予定通り実施した。④については、このうち台湾東部とロシア極東調査に関して、研究協力者の度重なる業務の移動や日程調整の不調が重なり、年度内の実施を断念せざるを得ない事態が生じた。しかし、その代替として、台湾東部についてはその地域に精通する研究者との情報交換を行ったり、資料の提供を受けたりしたこと、またロシア極東については、ロシア極東漁業の状況を日々ウォッチし配信している日本人漁業者から研究に関連する専門的な情報提供を受けるなどしたことが奏功し、研究計画全体に支障をきたす影響はなかった。 このように、当初の研究計画に変更をきたす事態には至っておらず、また着実に研究成果を挙げ、これを整理して各所で発表している状況に鑑みて、本年度の研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度にあたる平成28年度は、主に追加的な海外現地調査と各所での研究成果の公表、そして取りまとめを計画している。そこでの課題は、調査日程の確保や研究協力者・調査対象者との調整、学術会議開催の効率的な準備、研究成果の活字化などであるが、すでに前年度までの各種情報交換やミーティング、研究交流などによって克服されつつあり、所期の計画・目標は達成できる見込みである。本年度また、これまでの経験に照らして、必要に応じ行動計画の調整と研究協力者との綿密な連絡、不慮な事態に対応するための個別研究課題調査の代替策の準備を図ることで、計画通りに研究を推進するよう心掛ける所存である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施予定であった台湾東部及びロシア極東での調査が研究協力者・研究対象者の都合により実施できず、このため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分として請求した研究費については、当初の研究計画通りに、国内ミーティング、国内調査、海外調査、学術会議の開催、報告書の印刷などに充当していく予定である。次年度使用額分については、平成28年度中に台湾東部及びロシア極東での調査を行う予定であるので、それに充当していく予定である。
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Research Products
(9 results)