2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネットワーク外部性 / 双方代理 / 成約価格情報 / MLS |
Research Abstract |
この研究は、日米の市場環境、制度的背景を踏まえた理論モデルの構築、実証分析を、特に重要だと考えられるi 市場の競争環境、ii 情報提供機能とネットワーク外部性、iii 双方代理、成約価格情報の非公開の影響、などの横断的なテーマについて実施することを予定していた。 2013年度においては、日米の不動産市場環境の比較を行った文献の収集を行い、日本の中古住宅市場の脆弱性は、「再生投資を行わない」売り手、「建物品質の評価を行わない」買い手の行動に支えられた複数均衡問題としての性質を持つという仮説を検証した。 このような問題解決には、中古住宅市場活性化に伴って、市場参加者にメリットがあることを示す必要があるため、中古住宅市場活性化後の住宅市場のビジョンづくりを行った。具体的には、ストックフローモデルを用いたシミュレーションを行っている。このモデルは、住宅に対する需要を、他の金融資産とのバランスを考えながら決定する消費者の行動と、そこで決まった価格に応じて新築住宅を供給する住宅メーカーなどの行動を前提とした住宅市場モデルであり、長期的な住宅市場の分析においては標準的に用いられている(Potaeba(1984), Dipasquale and Wheaton(1994))。 中古住宅市場の活性化に関するシミュレーションから明らかになったのは、住宅の滅失率の低下に伴い住宅資産額は上昇するが、住宅価格、住宅投資額は下落する場合も上昇する場合もあるということであった。価格弾力性が高い場合は双方とも上昇するものの、低い場合はそうはならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、①平成25年度おいては、米国での先行研究成果を統合し、論文集を作成し、日本への適用可能性を含むサーベイを行うこと、②アカデミズムと実務家で共有するという意味から、両者で構成される不動産流通研究会を組織して定期的な発表、意見交換を行うこと、③レインズデータを入手することで国内の不動産取引に関するマイクロデータのデータベースを構築すること、④その上で、「市場の競争環境」をテーマとした研究を実施すること、を予定していた。 このうち、サーベイ研究及び市場の競争環境に関する研究についてはおおむね順調に進捗しており、また実務家を含む研究会については一般社団法人日米不動産協力機構との連携の下に10回程度開催されている。レインズによるデータベース構築は平成26年度以降に行うこととしたが、後半期で予定されていた中古住宅市場活性化後の住宅市場ビジョンの推定を先行して実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度においては、昨年に実施する予定であったレインズデータをもとにしたデータベースの実施を行う。さらに米国での不動産業の実態、MLSの運営などを含む実態調査を実施する。その上で、NARまたはMLSから不動産取引に関する米国のマイクロデータを入手し、レインズデータを基にした国内のマイクロデータと合わせたデータベースを構築する。 その上で、「情報提供機能とネットワーク外部性」をテーマとした、理論研究、実証研究を行う。不動産業者は、売り手と買い手を引き合わせるマッチングステージにおける情報提供機能、もう一つは売り手と買い手に取引を完遂させるバーゲニングステージにおける、売り手エージェント、買い手エージェントとしての代理機能を果たしてきたとされる。この二つの機能について日米双方の制度、業態実態を反映させた比較を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初はまた、レインズデータを入手することで国内の不動産取引に関するマイクロデータのデータベースを構築して、平成26年度にMLSデータと合わせて日米の不動産市場の比較分析を行うことを目指していた。しかし、中古住宅活性化等の政策の進展が予想よりも早く進んだため、それらの政策が実施されたのちの不動産市場のビジョンを示すことの方が優先されるべきという判断から、平成25年度は集計データに基づくシミュレーションの作業を優先した。このため、次年度使用額が生じることとなった。 すでに東日本レインズとはデータ使用の内諾を得ており、また米国のNARともMLSデータの入手の交渉も行っている。このため、平成25年度に実施予定だったレインズデータによる日本の不動産市場のデータベース構築と、MLSデータによる米国の不動産市場のデータベース構築を平成26年度に同時に行う見込みが立っている。
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Research Products
(11 results)