2015 Fiscal Year Annual Research Report
江戸幕府の金融政策―歴史資料と時系列データに基づく理論的・実証的分析―
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25285100
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| Research Institution | Osaka University of Economics |
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Principal Investigator |
高橋 亘 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (70327675)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上東 貴志 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30324908)
宮本 又郎 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 名誉教授 (50030672)
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
柴本 昌彦 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (80457118)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 金融論 / 経済史 / 金融政策 / 時系列分析 / 近世日本 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、市場経済が成熟した18世紀から幕末までの約150年間に、江戸幕府が打ち出した金融政策を取り上げ、政策に込められた意図と政策発動の経緯を歴史学的に復元し、政策を巡って交わされた当時の議論と、当時の人々の認識を理論モデル化し、期待された政策効果の論理的整合性を確認・評価することにある。初年度および2年度目は、史料・データの収集・整理という基礎作業を進めつつ、メンバー間の知識共有を図ることを主眼としたが、3年度目にあたる今年度は、基礎的データの整備作業を進めつつ、分析作業に着手した。その成果は以下に整理する通りである。
最大の成果は江戸時代の大坂を代表する両替商、加島屋久右衛門の経営資料、約1万点が発見されたことである（2015年5月）。加島屋久右衛門（廣岡家）は、江戸幕府の経済・金融政策発動時に、政策実行機関である大坂町奉行所から諮問を受けた商家であり、その家の記録は、そのまま江戸幕府の経済・金融政策に関する第一級の歴史資料となる。事実、19世紀初頭の米価浮揚策を巡る政策諮問書類が複数見つかっており、これらは全くの新出史料として価値が極めて高いと言える。
これと平行して、基礎的な資料の整備も進展を見せた。三井文庫所蔵の資料などに基づいた徳川時代の物価データの整備、その属性把握が完了した。その成果の一部は、3年に一度、開催される国際経済史会議（World Economic History Congress）にて発表された。
物価データそのものは、科学研究費補助金・研究成果公開促進費（データベース）の助成を受け、公開した（http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/project/kinsei-db/index.html）。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述した加島屋久右衛門家の新出史料は、研究プロジェクトにとって第一級の研究資料を提供するものである反面、この整理と分析なくしては、江戸幕府の経済・金融政策の全体像を把握することができない状況に直面したことも事実である。すなわち、これまで分析を進めてきた江戸幕府の各種政策（貨幣改鋳、米価浮揚など）について、改めて今回の新発見史料から得られる知見と突き合わせながら、整理・把握していく作業が求められることになるため、この意味では研究の進展を遅くする面もある。
しかし、「市場経済が成熟した18世紀から幕末までの約150年間に、江戸幕府が打ち出した金融政策を取り上げ、政策に込められた意図と政策発動の経緯を歴史学的に復元し、政策を巡って交わされた当時の議論と、当時の人々の認識を理論モデル化し、期待された政策効果の論理的整合性を確認・評価する」という本研究プロジェクトの目的に照らして、これほど適した資料群は他になく、本研究プロジェクトが受け皿となって新出史料が得られたことは、大きな成果であり、全体として、研究プロジェクトは順調に推移していると評価できる。
また基礎的な史料、データの整備が、事務補佐員の雇用によって、大幅に進捗したことにより、実証分析に着手することができた。また、総合地球環境学研究所の共同研究プロジェクト「高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索」（http://www.chikyu.ac.jp/nenrin/）との連携プロジェクトとして、上記研究所が保有する江戸時代の気象データ（降雨量、気温）と、本研究プロジェクトが整備を進めている江戸時代の経済データ（物価・金銀比価など）とを対照させ、分析を進める作業も、順調に進んでいる（担当は研究分担者の高槻泰郎・柴本昌彦と、連携研究者の村和明）。
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| Strategy for Future Research Activity |
先述した加島屋久右衛門家の新出史料は、2015年7月より整理（目録採り）に当たり、2016年3月末時点で、約5000点の整理（一部画像化）が完了している。2016年度以降は、この整理作業と必要な資料の画像化を進めるとともに、江戸幕府の経済・金融政策に関わる重要史料の読解・分析に着手せねばならない。
この作業は、歴史分析班である高槻泰郎（研究分担者）、村和明（連携研究者）が主導的に進めることになるが、そこで得られた知見は、随時理論分析班、実証分析班にフィードバックした上で、議論を深めていく必要がある。
具体的には、新出史料から確認される新事実を整理、共有する研究会を、今年度中に開催する予定である。また、可能であればここで得られた知見を、研究会・学会などに積極的に発信していく予定である。
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| Causes of Carryover |
2015年5月に加島屋久右衛門家の資料が新たに発見されたことを受け、この整理と分析に研究チームの労力が割かれた結果、研究成果の発表のための旅費（国内外とも）の支出が減ったことが、次年度使用額が生じた最大の理由である。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度中には、上記加島屋久右衛門家資料の整理と基礎的な分析が終わる見込みであり、その成果を国内外の学会で発表するための旅費支出が必要となる。当初予定していた次年度の研究費支出と併せて、成果報告のための旅費をより多く支出することにより、次年度使用額を活用する予定である。
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