2014 Fiscal Year Annual Research Report
リスク情報の統合開示に関する総合的研究 -統合報告にみる新しい財務報告の視座-
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25285139
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小西 範幸 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (80205434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 正樹 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00276049)
浅野 敬志 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (30329833)
梅原 秀継 明治大学, 会計専門職研究科, 教授 (40282420)
金 鉉玉 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (40547270)
町田 祥弘 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (50267431)
宇佐美 嘉弘 専修大学, 経営学部, 准教授 (60255966)
福川 裕徳 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80315217)
音川 和久 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90295733)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リスク情報 / 統合報告 / 財務報告の概念フレームワーク / ディスクロージャー / 監査人の関与 / 監査リスク / ビジネスリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によって,IFRS会計思考が展開されている現代の財務報告では,統合報告の可能性が広がってきていると判断することができるようになった。 本年度では,国際会計基準審議会(IASB)での財務報告の概念フレームワークの見直し作業の検討を通して,認識規準と測定規準の連携強化を図って,財務諸表に計上できる事象を広げると同時に,リスクが高すぎて財務諸表に計上できていない将来事象を織り込んでの会計事象の一体的な説明を試みようとしていることを明らかにした。会計事象はリスクあるいは不確実性を伴うリスク事象であり,当該確率分布から発生の可能性の範囲にわたってリスクが発生する見込みが決定され,不確実性が逓減していって財務諸表に計上できるようになる。財務報告では,財務諸表以外の情報の必要性に加えて,財務諸表との統合的な表示・開示が求められるようになり,その結果,実際的な将来予測情報が可能となっていく。有価証券報告書における事業等のリスクに焦点を当てて分析してみると,当該リスク情報の量や質に対して監査パートナーの影響が見られ,この影響は非Big4の監査人の場合により顕著であることが明らかにできた。 本年度では, また,日本のESGコミュニケーション・フォーラムが公表している「国内レポート情報」(2014年5月1日時点)に掲載されている「統合報告書」を公表している企業を分析した。その結果,開示情報量の多さや組織のサイロ化の問題が指摘されているものの,国際統合報告評議会(IIRC)の国際統合報告フレームワークの公表を契機として,係る事態を打開するための新たなコミュニケーションツールとしてのワンレポート型の統合報告書に注目が注がれていることが明らかとなった。他方,英国,米国およびIASBでは,財務報告の目的適合性の向上を図るため,其々に異なった「統合報告書」を公表して統合報告制度を確立していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していた,以下の①~⑥の実態調査・分析について,①,③,④については各研究目標に対して一定の成果を得ることができた(「研究実績の概要」を参照)。②については,幾度かの面談を重ねた上でパイロットテストを行い,アンケート調査票を完成させた。そして,平成27年3月に対象企業約150社に対して発送を行い,平成27年5月までに,その回収を待って分析を行う段階にある。⑤と⑥については,平成27年7月のアンケート調査実施に向けて,パイロットテストとして,面談の上,質問票調査を実施して,質問票の改善を重ねつつ,実施に向けての準備を今年度中に行っている。
【財務報告の領域】①日本での統合報告書の開示実態の調査,②当該日本企業に対するアンケート調査,③英国,米国,国際会計基準審議会(IASB)での会計ディスクロージャー制度(統合報告制度)の比較調査。
【監査・保証の領域】④有価証券報告書における事業等のリスクの情報の量と質に対して,監査人が関与しているのかどうかの実態調査,⑤監査報告書で開示されるリスク情報(key audit matters)について,全上場企業のCFOを対象として,その開示によって自社の財務報告におけるリスク情報の開示が影響を受けるかどうかを問う調査,⑥アナリスト及び個人投資家を対象として,その開示に関してどのように受け止めるかを問う調査。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に行う,以下の財務報告の領域と監査・保証の領域の実態調査を中心とする研究成果に,これまでの2年間に行ったリスク情報の開示と保証についての理論的,制度的および実務的な研究の成果を加えることによって,リスク情報を統合開示する1つの有効な手段として統合報告があることを明らかにする。また,そこでは,グローバルリスクに対処した統合リスクマネジメントの充実が,リスク情報の統合開示を促進する統合報告制度の確立を必然的なものとしていることを明らかにする。3年間の研究成果は,日本政策投資銀行・設備投資研究所の『経済・経営研究』において公表する。
【財務報告の領域】①日本での統合報告書の開示実態の調査を行った約150社に発送したアンケート調査の分析,②ビジネス・リスクの有用性,④英国での統合報告制度のフォローアップ,⑤統合報告書に係る「概念フレームワーク」と財務報告に係る「概念フレームワーク」の相対化を通した統一化の試み。
【監査・保証の領域】④監査報告書で開示されるリスク情報(key audit matters)について,全上場企業のCFOを対象として,その開示によって自社の財務報告におけるリスク情報の開示が影響を受けるかどうかを問う調査,⑤アナリスト及び個人投資家を対象として,その開示に関してどのように受け止めるかを問う調査。
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Causes of Carryover |
以下の①と②の実態調査について,予備調査の段階であり,まだアンケート調査票を配布していないため。 ①監査報告書で開示されるリスク情報(key audit matters)について,全上場企業のCFOを対象として,その開示によって自社の財務報告におけるリスク情報の開示が影響を受けるかどうかを問う調査,②アナリスト及び個人投資家を対象として,その開示に関してどのように受け止めるかを問う調査。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の①と②の実態調査について,すでに予備調査を終えているため,次年度において,全上場企業に対してアンケート調査票を郵送し,その結果を解析を行うために,当該繰越額を使用する。 ①監査報告書で開示されるリスク情報(key audit matters)について,全上場企業のCFOを対象として,その開示によって自社の財務報告におけるリスク情報の開示が影響を受けるかどうかを問う調査,②アナリスト及び個人投資家を対象として,その開示に関してどのように受け止めるかを問う調査。
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Research Products
(17 results)