2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285140
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻山 栄子 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50114020)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 財務会計に対する社会的要請 / 財務会計の概念フレームワーク / 意思決定有用性 / 受託責任会計 / 会計基準の国際比較 / 会計基準のコンバージェンス |
Research Abstract |
本年度は、次のような作業を並行して実施した。 (1)web上の研究拠点の構築:これまでの科研費課題において構築したweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じて、現代会計に対する多様なニーズに関する研究成果を情報発信した。 (2)セミナーの開催:実証研究者として国際的に名高いIlia D. Dichev氏 (米国・Emory大学教授)を招聘し、 “Quality earnings: Insights from comparing GAAP to NIPA earnings”ならびに“Earnings Quality: Definition, Importance & Measurement – A Discussion with Prof. Ilia Dichev”というテーマでセミナーを実施した。後者のセミナーには、Dr. Ahamed Ajward氏(senior lecturer, University of Sri Jayewardenepura)をディスカッサントとして海外から招聘した。同時にAjward氏には、海外実地調査のための準備作業に研究協力者として参加して貰った。 (3)定例研究会の開催:研究代表者ならびに連携研究者を中心としてセンターの定例研究会を開き、情報を共有した。 (4)海外実態調査のための準備作業:2014年度に予定している「現代の財務会計に対する社会的要請」に関する海外調査のための方法を調査検討するとともに、質問票のデザインを検討した。アンケート調査に関して見識を有する研究者として海外からAjward氏を招聘し、同氏の知見を共有した。 (5)海外のジャーナルへの論文投稿:研究代表者がMain Authorとして執筆した論文をAccounting in Europe、に投稿し、アクセプトされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本科研費の研究課題である、現代の財務会計に対する社会的な要請の調査研究のための準備作業は、目標通り進んでいる。2013年度には、海外実地調査のための準備作業として、質問調査の方法に関する検討を行ったが、研究の成否は、いかに調査目的に適合的な質問票(questionnaire)を有効にデザインできるかに依存しているという認識のもと、質問票の立案に多くの時間を費やした。さらに、現代の財務会計に対する社会的な要請に関する一般的な視点と併せて、リースや保険のような個別具体的な基準に対するニーズにも焦点を当てた研究を進めることになった。さらにその一環として、イスラム金融機関の会計に対する考え方とニーズに関する調査も、本研究課題にとって示唆に富む研究であることを確認した。 (2)上記の作業と並行して、長い間世界的にコンセンサスが得られているとされ無批判的に受け入れられてきた、「資本市場の投資家の意思決定に有用な情報の提供」という財務会計の至上目的は、本当に財務会計に対する世界規模の社会的なニーズに適合しているのか、という問題意識を共有して研究会を開催した。 (3)さらに本年度は、近年世界的な規模で論争が進んできた収益認識に関する会計基準を論じた論文を海外ジャーナルに投稿し、受領された(2014年4月公刊)。 2014年度にはメールならびに郵送、そして現地訪問による調査を行うことを予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度においても、本研究課題を通じて構築したweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じて、現代会計に対する多様なニーズに関する研究成果を情報発信するとともに、次の3つの活動を推進する。(1)海外の研究者を招いて国際シンポジウムを開催する。研究代表者は、2011年~2013年の3度にわたって海外の著名な研究者を招聘してシンポジウムを開催したが、この3度のシンポジウムは、会計基準をめぐる海外の情報を日本に紹介するとともに、日本の状況を海外に情報発信するうえで非常に高い評価を得ている。(2)平成25年度から開始した海外調査の準備作業を続ける。 (3)上記の準備作業が完了し次第、2014年度には海外調査(アンケート調査及び海外出張調査)を実行する。そしてできれば調査結果の分析に着手する。 研究期間の最終年度である2015年度においてはweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じた活動を継続して進めるとともに、可能であればこの拠点を平成28年度以降も維持発展させるような工夫を模索する。そして、以下の作業を追加する。さらに、平成26年度に実施した海外調査の結果を分析し、①現代の財務会計に対する真の意味での社会的な要請はどのようなものであるのか、②それは現代会計における2つ基本思考が前提としている社会的な要請のどちらに近いのか、③そしてそれは時代を超えた普遍性を有しているのかについて、一定の結論を導く。 以上の結果を報告書としてまとめてweb上で公表すると同時に、刊行する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度においても海外における調査研究を実施する可能性があったため、2,100,000円の旅費を申請したが、2013年度は調査のための準備作業(質問票の立案改善等)を優先したため、メンバーの海外出張旅費ならびにアンケート調査会社に対する支出を2014年に繰り越した。 2014年度には、メンバーによる海外調査を実施し、併せて専門の調査会社に依頼してメールによるアンケート調査を実施する予定である。
|