2014 Fiscal Year Annual Research Report
《ハンセン病問題の社会学》の集大成にむけて――語りの記録化と多事例対比解読法
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25285145
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福岡 安則 埼玉大学, 教養学部, 名誉教授 (80149244)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい予防法 / 隔離政策 / 聞き取り / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年4月に栗生楽泉園の「重監房資料館開館記念式典」に招待されて参加。5月,栗生楽泉園での「第10回ハンセン病市民学会」に参加,福岡安則が「証言集の分科会」で報告。6月20日「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」式典に参加。翌21日,都内で催された「全療協神美知宏会長・全原協谺雄二会長を偲ぶ会」に参加。6月「星塚敬愛園」で,7月「菊池恵楓園」で,9月「台湾楽生院」で,12月「松丘保養園」で聞き取り調査。2月はじめ,熊本市での「れんげ草の会(ハンセン病遺族・家族の会)」総会に出席した後,「菊池恵楓園」で聞き取り調査。2月下旬「星塚敬愛園」で聞き取り調査。また,11~12月に「あおばの会(東日本退所者の会)」石山春平会長の聞き取り。3月,同夫人聞き取り。2月中旬にも「あおばの会」会員1名から聞き取り――と精力的に調査を実施した。 福岡が平成27年5月に東京開催の「第11回ハンセン病市民学会」の「実行委員会事務局長」に就任したことに伴い,8月以降毎月開催の「実行委員会」参加のためなど,1年間で「多磨全生園」を17回訪問。 また,《故郷喪失と他郷暮らし》という点でハンセン病問題と通底する「福島原発事故による避難者」の聞き取り調査を,4月に飯舘村,7月と11月に三春町で実施。 調査実施後には必ずフィールドノートをつけて研究資料として蓄積。また,福岡主宰の月1回の「マイノリティ問題研究会」で,福岡と黒坂がほぼ毎回,研究報告をして研究の進展に役立てている。 こうしてこの1年間の主たる研究成果としては,「第30回日本解放社会学会大会」で福岡が「聞き取りにおける『セピア色の記憶』」を報告。年度末には,紀要『日本アジア研究』第12号に聞き取り事例3編を発表。さらに3月末には黒坂愛衣(平成27年3月18日付で研究分担者に加わることが承認された)が『ハンセン病家族たちの物語』(世織書房)を脱稿,5月10日に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象者たちとの関係性など,調査を滞りなく進めていくための条件が,きわめて良好であり,予定された調査が滞りなく進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,当初の計画に沿って,これまでと同様に,精力的に進めていきたい。5月の「第11回ハンセン病市民学会in東京・駿河」では,研究代表者の福岡安則が「実行委員会事務局長」をつとめる。これは,社会学の領域でいう“アクションリサーチ”という技法であり,調査対象が社会問題であるとき,当事者たちによるさまざまな社会的実践がなされる。研究者自身がその渦中に入ることにより,通常では得難い情報が入手可能となるなど,利便性に富む。同大会では,福岡が「分科会 国際連帯」のコーディネーターをつとめることで,ゲストとして招く韓国・台湾の当事者たちとよりいっそうの親密関係を構築できる。黒坂愛衣(平成27年3月18日付で研究分担者に加わることが承認された)は「分科会 家族」でパネラーをつとめ,「れんげ草の会(ハンセン病遺族・家族の会)」のみなさんとの関係をいっそう深める。すでに,調査日程が確定しているところでは,6月に鹿児島県の「星塚敬愛園」を訪問,7月に熊本県の「菊池恵楓園」を訪問,9月に台湾の「楽生院」を訪問して,聞き取り調査を実施する予定である。その後も,全国各地のハンセン病療養所を訪ねて,聞き取り調査と原稿確認の作業を進めたい。 また,ハンセン病問題の捉え方の視点をより深く,より鋭いものとするために,国家政策ゆえに結果的に《故郷喪失と他郷暮らし》を余儀なくされたという点で,ハンセン病問題と通底するところのある「福島原発事故」の避難者たち,具体的には仮設住宅での生活を余儀なくされているひとたちの聞き取り調査も,可能な範囲で実施していきたい。 あとは,これまでと同様に,研究成果を大学の紀要や学会誌,さらには当事者団体の発行する機関誌などに,随時発表していきたい。また,学会報告も積極的におこなっていく。
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Causes of Carryover |
調査結果整理のための消耗品代を節約することができたため,である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査結果を一日も早く公表できるようにするため,聞き取りデータの「音声おこし」作業の謝金に有効に使う予定である。
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Research Products
(9 results)