2015 Fiscal Year Annual Research Report
《ハンセン病問題の社会学》の集大成にむけて――語りの記録化と多事例対比解読法
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25285145
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福岡 安則 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 名誉教授 (80149244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒坂 愛衣 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (50738119)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい予防法 / 隔離政策 / 聞き取り / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
福岡が2015.5.9~10の「第12回ハンセン病市民学会」の実行委員会事務局長を務め、「国際連帯」と「家族」の分科会の企画運営に関与、国際連帯分科会の司会を務めた。黒坂も家族分科会のパネラーを務めた。6月22日、厚労省主催の「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日式典」および「ハンセン病問題対策協議会」に参加。6月に国立の星塚敬愛園、7月に菊池恵楓園、8月に駿河療養所、9月に星塚敬愛園、12月に松丘保養園、1月に菊池恵楓園を訪問、調査を実施。8月に民間の神山復生病院を訪問、調査を実施。7月に退所者からの聞き取り。9月に台湾の楽生療養院を訪問、調査を実施。 黒坂の『ハンセン病家族たちの物語』出版が契機となって始まったハンセン病家族集団訴訟の原告団結成式(2016.1.23)、熊本地裁への第一次提訴(2016.2.15)に立ち会った。 研究成果としては、『ハンセン病家族たちの物語』の上梓のほか、埼玉大学の紀要『日本アジア研究』第13号に聞き取り事例3編を発表、第31回日本解放社会学会大会、第88回日本社会学会大会、第58回日本病院・地域精神医学会総会で福岡が研究報告。 また、《故郷喪失と他郷暮らし》という視点でハンセン病問題とつながることから、福島第一原発事故により避難を余儀なくされている福島県飯舘村長泥地区住民たちからの聞き取り調査も実施してきたが、福岡と黒坂は「長泥記録誌編集委員会」の一員として『もどれない故郷ながどろ――飯舘村帰還困難区域の記憶』を出版。この著作は、朝日新聞の「天声人語」(2016.3.11)で取り上げられた。さらに福岡は、山崎敬一ほか編『日本人と日系人の物語』に論文「ある日系二世聞き取り――ハワイにて」を発表。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象者たちとの関係性など、調査を滞りなく進めていくための条件が、きわめて良好であり、予定された調査がほぼ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に研究分担者の黒坂愛衣の『ハンセン病家族たちの物語』の出版が大きなきっかけとなって、「ハンセン病家族集団訴訟」が始まった。すでに4月3日~4日に福岡で開かれた「弁護団合宿」で黒坂と福岡が参与観察をおこなった。4月下旬には、宮城県多賀城市在住の家族原告からの聞き取り調査をおこなう。5月中旬に鹿児島県鹿屋市で開催される「第12回ハンセン病市民学会」の、昨年に引き続く「家族分科会」では黒坂がパネラーをつとめる。5月15日~22日には、韓国のハンセン病問題調査を実施する。具体的には、植民地支配下で作られたハンセン病患者の収容所「ソロクト」の百周年記念では、福岡がSorokdo National Hospital 100th Anniversary International Conferenceで「ハンセン病問題最後の課題――日本の家族集団訴訟、韓国の定着村のこれから」と題して報告をおこなう。そのあと、麗水と釜山にて「定着村」での調査をする。6月16日に厚労省の主催で開催される「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」式典と「ハンセン病問題対策協議会」に出席する。 以上が、すでに日程が決まっている調査スケジュールである。夏休み以後も、家族原告からの聞き取り、各地のハンセン病療養所を訪ねてのフィールドワークを実施する。熊本地裁での「家族訴訟」の公判廷が始まれば、可能なかぎり傍聴する、等々。 これらのフィールドワークの成果は、福岡が主宰する「マイノリティ問題研究会」で発表しつつ、その知見をより洗練されたものにしていきながら、大学の紀要や学会誌、さらには当事者団体の発行する機関誌などに随時発表していきたい。また、学会報告も積極的におこなっていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、研究代表者の福岡安則が「不安定狭心症」と「冠攣縮性狭心症」を発症し、多少調査活動を控え目にしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、健康面での不安は解消しているので、調査旅費などに有効に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)