2016 Fiscal Year Annual Research Report
《ハンセン病問題の社会学》の集大成にむけて――語りの記録化と多事例対比解読法
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25285145
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福岡 安則 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 名誉教授 (80149244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒坂 愛衣 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (50738119)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい予防法 / 隔離政策 / 聞き取り / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の研究実績としては、韓国での国際シンポジウムに2度にわたり招待されて報告した。1つは、「国立ソロクト病院」主催で5月に開催された “Sorokdo National Hospital 100th Anniversary International Conference” で福岡安則が “Final Task for Leprosy Issue” と題して報告。その後われわれは、韓国のハンセン病問題の歴史的汚点の一つ、「五馬島の干拓地」を見学、麗水の「愛養園」、金海の定着村「徳村マウル」で聞き取り調査。2つめは、当事者団体「韓国ハンセン総連合会」主催で11月に開催された “2016 World Forum on Hansen’s Disease, Seoul” で、福岡が “The Meaning of Listening Their Voices” と題して、黒坂愛衣が “The Suffering of the Family Members of Those Affected by Hansen’s Disease in Japan” と題して報告した。 国内調査としては、「ハンセン病家族集団訴訟」が始まったことに伴い、熊本地裁での3回の「口頭弁論」を傍聴するとともに、家族原告からの聞き取りを精力的に実施した。 研究成果としては、福岡が、韓国ハンセン総連合会の機関誌『ハンセン』(78号~80号)に韓国語の論考「ハンセン病問題最後の課題」を連載。埼玉大学の紀要『日本アジア研究』第14号に「ハンセン病非入所者家族被害論」を発表。『病院・地域精神医学』第59巻第1号に「『怒りの語り』と『感謝の語り』――ハンセン病回復者の聞き取りから」を発表。質的調査の方法と倫理をめぐって、単行図書『質的研究法』(弘文堂)を上梓。黒坂は『朝日新聞』2016.4.20「ひと」欄に「ハンセン病回復者や家族らに耳を傾ける東北学院大准教授 黒坂愛衣さん」として顔写真入りで紹介された。また、福岡と黒坂が日本社会学会と日本解放社会学会で、それぞれ研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象者たちとの関係性など、調査を滞りなく進めていくための条件が、きわめて良好であり、予定された調査がほぼ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年2月、3月の二次にわたる計568名の原告団による「ハンセン病家族集団訴訟」の提訴によって、わたしたちにとっては、《ハンセン病罹患者の家族たち》からの聞き取り調査が、第二ステージに入ったとの実感がある。社会の片隅に隠れ住んできた「家族」とは、これまでなかなか出会うこと自体が困難であったが、ここへ来て、多くの家族原告との出会いが可能となった。それだけでなく、以前にすでに聞き取りをした「ハンセン病回復者」と、「その子どもや弟妹」といった組み合わせでの聞き取りが可能となった。これは、ハンセン病隔離政策が及ぼした被害の実像を立体的に浮かび上がらせる戦略高地となることは疑いない。ひとつには、この点に焦点を絞っての聞き取り調査を精力的に実施する。 もうひとつは、ここ5年にわたって毎年欠かさずに実施してきた韓国の「ハンセン人定着村」を訪ねての聞き取り調査を、今年度も夏季に実施する。 最終年度ということもあり、研究成果のまとめを急ぐ。ひとつには、福岡安則が『こんなことで終わっちゃあ、死んでも死にきれん――ハンセン病非入所者家族訴訟原告の叫び』(世織書房刊予定)を夏ごろまでに書き上げる。もう1冊、福岡安則と黒坂愛衣の共著で『怒りの語りと感謝の語り――ハンセン病問題の社会学』(仮題)を書き下ろす。また、秋の日本解放社会学会大会、日本社会学会大会で研究報告をするほか、所属大学の紀要などに調査結果を公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたといっても、1万円に満たない額であり、不要な支出を押さえたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であり、研究計画全体の遂行のなかで有効に使用する。
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Research Products
(14 results)