2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブローカー介在型多文化家族の家庭内暴力の社会福祉学的予防システム開発に関する研究
Project/Area Number |
25285172
|
Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
尹 靖水 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20388599)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ブローカー介在型 / 多文化家族 / 家庭内暴力 / 国際結婚 / 結婚移住女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は前年度の量的調査に引き続き、アジア3カ国を中心とする質的調査と補足調査を行った。本調査はフローカー介在型による多文化家族の調査のため、量的にも質的にも信頼性に欠ける回答が多く含まれることから再調査によるデータ補足が行われた。また、国際結婚移住女性の送る側である中国やフィリピンなどの現地での聞き取り調査も行われ、多文化家庭を囲む多文化家族の現状を理解するなど一定の成果を上げている。 特に本年度から欧米諸国の調査を予定していたが、2015年度にVienna大学で開催予定の国際学会での成果発表なども予定されているため、次年度の予定と変更するに至った。 しかしながら、オークランド大学のChangzoo Song教授の協力の下、近来積極的に移民政策を取り込んでいるオークランド地域開発部を訪問し、strategic advisor Diversityの役割を果たしている Austin Kimの下、多文化社会を目指す意義および多くの課題について討論し、期待以上のデータ収集が出来た。さらに新移住者をサポートするNPO Raeburn HouseのChief、Carol Ryanをはじめ専門職員とのディスカッションし、連携多文化家庭の聞き取り調査が行われた。 本年度は調査とともに社会統合のための代案を模索する次年度の課題も視野に入れ、儒教文化、家族主義、共同体意識、民族主義、地域社会などを総合的な分析視点とするソーシャルワークの東アジアモデルの構築を企図したものであった。従ってブローカー介在型多文化家族の夫婦の家族形成に関する継続意思に関連する要因を、結婚コミットメントやその前提となるサイドベット理論を踏まえた個人特性との関連で解析し、かつその解析結果を基礎とする社会福祉学的なアプローチの体系化を試みてきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、国際結婚移住女性および多文化家族に対する社会的関心が高まる中、ブローカー介在型多文化家族に対する社会的認識も変わりつつある一方、未だ多くの地域では先入観や偏見による視線が感じられるのが状況である。このような状況の中で、本調査が順調に進んでいる理由としては、アジアの多くの地域で信念と希望を抱くソーシャルワーカーの使命感が背景にあると思う。韓国のように「多文化家族支援センター」のような組織はないものの個別に関係を持ちながら連携している私的ネットワークの力量は計り知れないものである。その結果、今回の研究調査が概ね順調に行われている。今後の課題としても多くのアジアや欧米を含む多文化専門家のネットワークつくりは現代社会に大いに貢献できることを信じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.質的調査研究:最終年度の質的調査として、欧米諸国の専門機関における家庭内夫婦間暴力の予防対策の実情について聞き取り調査ならびに政策と施策に関する資料の収集を行う。このとき欧米諸国のうち、研究協力者であるパリ第5大学Anne-Marie Guillemard名誉教授、デュッセルドルフ大学島田信吾教授、アメリカン大学Bette J.Dickerson准教授、オークランド大学のChangzoo Song教授の協力の基でフランス、ドイツ、アメリカのアプローチについて聞き取り調査を行う。 2.量的調査研究:最終年度の量的調査に関しては、前年度の解析を基礎に、東アジア3地域のブローカー介在型多文化家族において発生する家庭内夫婦間暴力に共通して関連性が明らかとなった変数を用い、個々の心理的虐待行動を従属変数とする予測モデルの開発を試みる。さらに、こうした3年間の研究成果を基礎に、ブローカー介在型多文化家族の家庭内夫婦間暴力に関する社会福祉学的な予防システムを新たな視座からモデル化する。 3.調査研究のまとめ:調査研究は、ブローカー介在型多文化家族の家庭内夫婦間暴力に関する社会福祉学的な予防システム開発を前提に、初年度のブローカー介在型多文化家族の相談に携わる専門家を対象行った約70項目となる半構造化面接と、東アジア3地域のブローカー介在型多文化家族の家族内夫婦間暴力の発生に関連する約900サンプル(各地域の夫・妻それぞれ150サンプル)を基礎に、次年度の解釈結果で得られた研究成果とともに東アジア3地域で共通して有効に機能するブローカー介在型多文化家族の家庭内夫婦間暴力の予防システム開発を試みる。特にアジアの多民族・多文化政策を取っている国や地域の社会統合の意義と欧米諸国との比較を通して、より適切で専門的な社会福祉援助技術の体系構築を志向する。
|