2015 Fiscal Year Annual Research Report
謙遜と自己高揚の普遍性に関する13ヶ国比較研究:脳生理学的基盤の検討を含めて
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25285177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 勧 奈良大学, 社会学部, 教授 (80134427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 謙遜 / 自尊心 / 比較文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、質問紙法、IAT(implicit association test)、ERP(event related potential)の三つの手法を用いて、実証研究を行った。これにくわえて、10数か国において、謙遜に関する質問をインターネット上で行った。これまでの諸国に加えて、オーストラリアでもデータを収集中であり、現在これらのデータ収集の完了を待っている段階である。これまでの諸研究と同様に、得られたデータはどの文化においても謙遜が存在することを示している。とくにIAT実験では引き続き、自己と肯定性、自己と謙遜、謙遜と肯定性などについて、それぞれの潜在的意識レベルでの連合の強さを測定したところ、潜在的意識のレベルで、自己と謙遜の連合が、自己と謙遜以外の連合よりも強い、という結果と、謙遜と肯定的の連合が、謙遜と否定的の連合よりも強い、という結果が得られた。これは日本のような謙遜規範の強い文化で期待される結果であった。さらに、安定した高自尊心者ほど、潜在的に謙遜との連合が強い可能性についても検討したが、そのような結果は得られなかった。そのかわり、謙遜IATの得点が最も高かったのは、潜在的自尊心高群で、かつ顕在的自尊心低群であるという結果が得られた。つまり、顕在的自尊心は謙遜を反映するが、潜在的自尊心は謙遜によって低下しないことを意味すると考えられる。以上のように、顕在的自尊心と潜在的な自尊心は謙遜の異なった側面と関連していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず第一に、IAT(implicit association test)と同時にERP(event related potential)の測定を行っているが、これまでノイズの影響が十分に排除できないため、明確な結果が得られないでいる。また、一部の国での倫理申請などに時間がかかったために、データ収集が開始できないでいる。さらに、質問紙実験において、詳細な質問項目を加えた上で、追加実験を行う必要が生じてきたが、シナリオの文化間での共通性を保つための配慮が必要であり、そのために、予定よりも全体の進行にやや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験室の環境を整備してさらにERP測定の際のノイズを排除するように試みる。また、オーストラリアにおいて倫理申請についてはすでに行っており、間もなくデータ収集が開始できるはずである。また、その他の国でのデータ収集は完了し、これからデータ分析を行っていく予定である。さらに、次の段階の実験については、シナリオの調整中であり、これも間もなくシナリオを確定し、データ収集を開始する予定である。今後はデータ収集と並行して、これまでに得られたデータを分析し、総合的な解釈を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ERPを測定する実験を再度行う必要が生じたことと、質問紙研究を次の段階に進めることが必要になったこと。さらに、データ分析をする必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、実験経費および最終データ分析についての検討のために国内外の研究者とのミーティングに使用する予定。
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