2015 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルメディアによる情報伝播過程と社会的影響:大規模データに基づく実証的研究
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25285181
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
松村 真宏 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10379159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビッグデータ / ソーシャルメディア / 情報伝播 / ネットワーク / 社会的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体的な目的は,東日本大震災という危機的出来事とそれに引き続いて晒され続けている原子力災害リスクに関する情報伝播の特徴と,日本居住者の情動状態を長期的かつ探索的に検討することを通じて,危機的状況における人間の情報行動の特徴を明らかにすることである. まず,東日本大震災のうち原発事故による災害に関するネガティブ情動の社会的共有に着目して,震災後1年以上にわたる長期間のソーシャルメディアへの投稿を分析対象とし,その中に含まれる怒り情動語と不安情動語の出現比率を,投稿者の居住地の影響を加味して分析した.怒りと不安で出現パタンやその時系列推移が異なることが示された. また,ソーシャルメディアにおいて個人がリスク情報を拡散するか否かを決定する要因について,ツイッターを中心とした大規模なソーシャルメディアデータの収集・分析に基づいて検討を行った。拡散された情報に対するリスク認知,およびリスク情報の詳細な伝播経路および個々のユーザを取り巻くネットワークの構造の分析から,ソーシャルメディアにおけるリスク情報拡散の背景に「情報を共有する」,「情報によって喚起された感情を伝達する」という2つの異なる情報伝播メカニズムが存在することが明らかになった. さらに,ソーシャルメディア情報伝播におけるメディアの役割を明らかにするために,他メディアに流れた情報を共有する「メタメディア」としてのツイッターの性質を分析した.ツイートにおいて言及されたメディアの分類,およびメディアによって喚起されるポジティブ/ネガティブ感情語の時系列変化を測定し,メディアの種類によって感情反応の時系列パターンが異なることが見出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,ソーシャルメディアにおける感情の社会的共有と情報伝播について分析し,その特徴やメカニズムを明らかにすることができた.また,研究成果として,以下の論文が審査中,あるいは投稿準備中である. Naohiro Matsumura, Asako Miura, Masashi Komori, and Kai Hiraishi (submitted) Media Mediate Sentiments: Exploratory Analysis of Tweets Posted Before, During, and After the Great East Japan Earthquake. International Journal of Knowledge Society Researchに投稿,審査中. Masashi Komori, Asako Miura, Naohiro Matsumura, Kazutoshi Maeda and Kai Hiraishi (in preparation) The spread of risk information through microblogs: Twitter users with more connections relay more dreadful news. Risk Analysis誌へ投稿準備中 Asako Miura, Masashi Komori, Kai Hiraishi, and Naohiro Matsumura (in preparation) Social sharing of negative emotion on nuclear hazard risk with the 2011 Great East Japan earthquake: Long-term longitudinal transition of anger and anxiety. Risk Analysis誌へ投稿準備中
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果公表のために,現在審査中,あるいは投稿準備中の論文の公刊に向けて最大限努力する.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画は順調に進捗しており,論文として成果を着実に公刊しつつある.一方で,その成果をふまえた新たな研究の必要性に気づかされた.その追加分析の成果は,既にその一部を2015年度末に1本国際誌に投稿し,現在審査中であるが,さらに今後まもなく2本を投稿予定で準備している.しかし数千万件におよぶ大規模データの処理と分析には非常に長時間を要するため,年度内に分析結果の精査が完了しなかった.そこで,次年度にかけてこれを完了させた上で,論文を作成し,投稿することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に論文作成にかかる英文校閲費である.よりクオリティの高い校閲を経るため,2つの業者に依頼してダブルチェックを行うことが必要である.
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