2014 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育場面における社会的絆の形成と回復をめざす支援の検討
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25285182
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 一子 筑波大学, 人間系, 教授 (40206264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 大介 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (20550643)
岡崎 慎治 筑波大学, 人間系, 准教授 (40334023)
都丸 けい子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (40463822)
石隈 利紀 筑波大学, 附属学校教育局, 副学長・教育長 (50232278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的絆 / 学校教育場面 / 絆の形成と回復 / 適応 / 青年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目的は、生徒にとっての社会的絆を明らかにし、関連要因(愛着や適応)との関係を検討すること、学校教育場面の人間関係において傷つき体験を持つ、人との関わりを避ける、人とうまく関われない等、支援が必要な生徒に個別的支援を実施し、人とのつながりが実感でき、安心できる関係づくりを進めその効果を検証すること、であった。 この目的の下、第一に中学生102名、大学生113名を対象として社会的絆に関する調査を実施した。調査の結果、絆のイメージは①学校や部活、関係性、時間など「絆の成立する場と時間」、②ポジティブ・ネガティブ、連帯など「絆の性質・意識」、③思いやり・尊敬・安心など「絆に伴う情緒」、④団結・協力・助け合いなど「絆の有り様」などがあり、友人・仲間・家族・教師等の人間関係、情緒、学校・部活などが成立する場、団結・協力などの行動とも結びつくことが示された。人との絆の象徴としての「大切な物」の存在、意味も検討された。 第二に、学校教育場面における絆形成の支援を行った。具体的には高校における生徒への個別的支援を実施した。生徒とのつながりを作る関わり方として、①生徒の背景への考慮、②共感、傾聴、生徒中心的関わり、③生徒の新たな面、ポジティブな面への気づき、③目的を見つけ共に向かうこと、などが明らかになった。生徒への支援を通して支援を行う学生にも変化が生じ、心理的支援の重要性や学生自身の気づき、学生の進路や目標の変容ももたらすことが明らかになった。次に、中学校における生徒が様ざまな悩みを抱えたクラスへの社会的絆づくりを目的とした集団的支援を実施し、集団に対する絆作りの介入実践を行った。 これらの調査による尺度の検討と個別・集団への支援の実践を通し、今後は、尺度を用いて支援の効果を明らかにすること、二次的、三次的支援サービスだけでなく一次的支援の効果の実証が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は二点、一点は尺度の作成、関連要因の検討、二点目は個別、集団的支援(絆づくり)の介入である。 まず、一点目の尺度作成について、社会的絆の尺度の質的検討を進めることができた。しかし、質的検討に時間がかかり、量的検討を進めることができなかった。したがって今後は大量の対象者に対する調査を実施し、量的検討、信頼性・妥当性の検討を行う必要がある。最終年度として、愛着、教師への信頼、学校適応など関連要因の検討も行う必要がある。 目的の二点目は、学校教育場面における絆形成の個別的・集団的支援の実践である。青年期にある高校生への絆形成のための個別的支援はほぼ計画に沿って継続的に進めており、効果的援助についても援助者へのインタビューから明らかにすることができた。また集団的支援として支援が必要と考えられるクラスを対象に二次的支援の介入(クラス単位の支援)を実施し、学校関係者から一定の効果が報告された。今後は個別支援の継続、個別支援と集団支援の効果の検証を実証を進める中で行う必要がある。 平成26年度は大量の調査を実施する計画であったが質的データ分析に時間がかかり過ぎた。そのため尺度開発と信頼性・妥当性の検討、関連要因の検討、効果の検証について課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として、必ずしも計画通りに進んでいない尺度の開発、信頼性・妥当性の検討、関連要因の検討、関連要因の構造的検討も実施する。さらに、尺度開発による個別的、集団的支援の効果の検討を鋭意進め、平成27年度は最終年度のため、研究全体のまとめを行えるよう進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度は大量の調査を実施する計画であったが、質的データ分析に時間がかかり、関係者の打ち合わせも思うように進めることができなかった。そのため尺度開発と信頼性・妥当性の検討、関連要因の検討に要する予算が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、平成26年度に行う予定であった尺度の開発、量的検討を進め、同時に関連要因の検討、信頼性・妥当性の検討を行い、関連要因の構造の分析も行う。
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