2015 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育場面における社会的絆の形成と回復をめざす支援の検討
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25285182
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 一子 筑波大学, 人間系, 教授 (40206264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 大介 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20550643)
岡崎 慎治 筑波大学, 人間系, 准教授 (40334023)
都丸 けい子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (40463822) [Withdrawn]
石隈 利紀 筑波大学, 学内共同利用施設等, 副学長 (50232278)
新井 雅 健康科学大学, 健康科学部, 助教 (80750702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的絆尺度 / 絆づくり / 学校適感 / 信頼感 / 中学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画に基づき3つの研究を実施した。第1にこれまでの研究成果を踏まえ社会的絆尺度の作成と検討を行い,第2に社会的絆と関連要因との関連性を検討した。第3に社会的絆形成を目的とし,学校教育現場での人間関係づくり,生徒への支援を行い,その効果を検討した。 第1と第2の研究では,中学生905名(男子447名,女子458名)を対象に社会的絆尺度,学校適応感尺度,信頼感尺度,親への愛着尺度,を実施した。社会的絆を因子分析した結果,「教師への愛着」「友人への愛着」「家族への愛着」「巻き込み」「規範意識」の5つの因子が抽出され,これらは学年と性で差が認められた。教師への愛着は1年生が2年生より高く,友人への愛着,家族への愛着では男子より女子が高く,学年が上がるほど得点は下がっていた。規範意識は3年生が最も低く,女子より男子の方が高かった。社会的絆は,学校適応感,信頼感,親への愛着,友人満足,対人的構えの親和性のいずれとも中程度の有意な正の相関が認められた。重回帰分析の結果,信頼感から社会的絆,社会的絆から対人的構え,学校適応感に有意な正のパスが示された。 第3の研究では,中学校1年生の生徒34名(男子19名,女子16名)を対象とし,学校教育現場における社会的絆形成のための働きかけを2週間で3セッション,それぞれ40分ずつ実施した。その結果「つながりが感じられる」と答えた生徒はそうでない生徒に比べて学校適応もよく,仲間から受け入れられていると感じ仲間とのサポートのやりとりを有意に多く行っていることが明らかとなった。 中学生にとって社会的絆は,学校生活における適応や仲間との関係の形成・維持において重要な要因であることが確認された。今後は絆の回復,絆を感じられない生徒の支援についてさらに検討を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の研究計画のうち「社会的絆」尺度の調査実施が遅れたため,27年度はこの調査実施と分析を中心に進めた。調査の分析結果から,一部,予測と異なる結果が出たことに伴い,信頼性を検証する必要が生じたため一部の調査(再調査)を年度後半に実施し,結果のまとめに時間をかける必要が生じた。このため,現在さらに結果を分析中で,当初の調査実施計画は概ね年度内に終えることができたが,研究全体のまとめを含め一部来年度に持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により中学生の社会的絆の大部分を,家族,教師,仲間との愛着が占めることが明らかになった。今後は,①尺度の精査,②社会的絆の発達を中学生,高校生,大学生に広げ横断的,縦断的に検討すること,③他の学校適応の指標(仲間関係,教師との関係,学業成績,不適応,日常生活)との関連のさらなる検討,④社会的絆の修復にはどのような支援が必要なのか,を明らかにする必要がある。
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Causes of Carryover |
①今年度予定していた調査実施に遅れが生じたことと,②結果の処理の過程で予想と異なる結果が生じたため,信頼性の再検討が必要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
信頼性を高めるための追試及び尺度の再検討を行い,研究のまとめと今後の研究の発展にむけての打ち合わせ,報告書の作成に使用する。
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