2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
針生 悦子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70276004)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語発達 / 語彙獲得 / 乳児 / 統語カテゴリー / アクセント |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、子どもはどのような手がかりを使って、指示対象を対応づけるべき単語をそうでない音や音声と区別し学習していくのか、また、このような音声の記号化過程において、単語が持つ音響的側面に対する子どもの感受性はどのような発達的変化をとげていくのか、について明らかにすることであった。 本年度は、1)単語導入のタイミングが子どもの単語解釈に及ぼす影響、2)隣接する助詞を手がかりとして、初めて耳にした単語を、子どもが統語的にカテゴライズできるようになる時期、3)子どもの単語表象におけるピッチアクセント情報の位置づけ、について検討するため、3歳くらいまでの子どもを対象とした実験を行ってきた。その結果、以下のことが見出された。 1)16か月児では、単語音声の導入がオブジェクトの動きと同期したかたちでなされないと、単語音声とイベントとの結びつき自体が不安定なものになる。しかしその一方で、単語音声がオブジェクトの動きと同期したかたちで導入されると、その単語音声は、オブジェクトやその動きなど構成要素どうしが緊密に結びついたイベント全体と結びつけられてしまう。このように、イベントから特定の概念だけを切り出して結びつけ、音声を単語として学習するのは、16か月児にはまだ困難である。 2)15か月になるまでに子どもは、新しく耳にした単語のあとに助詞「が」が続くということを手がかりとして、単語を(あとにほかの助詞「は」や「を」が続くのはかまわないが、「る」や「らない」などの動詞活用語尾は来ることが出来ないという意味での)”名詞”に分類できるようになる。 3)24か月児は、既知の単語とアクセントの位置のみが異なる単語を、新しいオブジェクトに結びつけ、既知の単語とは別の意味を持つ単語として学習するのは困難である、しかし、3歳ころまでには、このようなことができるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、予定していた実験的研究については予定どおり実施、一定の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究で得られたデータは、分析を進め、国外、国内の学会で発表するとともに、論文にまとめ、学術雑誌に発表していく。また、上記1)と3)については、本年度に得られた知見を発展させる、実験的な研究を行っていく。さらに、単語や文が発話されるときのプロソディ的側面が、子どもの言語理解に及ぼす影響について、予備的な検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験刺激(動画、静止画像)を作成するためにこれまで使用してきた高速処理可能なPCが老朽化してきていたため、その新しいものを購入する予定であった。しかし、実験を進めるにつれ、実験装置の構成を再考する必要性が出てきて、現在、PCの代わりにアイトラッカーの購入について検討中である。 アイトラッカーの必要性について、計画中の実験の内容などとも照らし合わせて検討し、必要になった場合には、アイトラッカーの購入資金とする。アイトラッカーが必要ではないと判断された場合には、当初の予定どおり、実験刺激作成用に高速処理の可能なPCを購入する。
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