2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285183
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
針生 悦子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70276004)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 言語発達 / 助詞 / 感嘆詞 / レキシカルバイアス / 乳幼児 / 話者感情の推測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1)乳児はいつから助詞を利用して発話から単語(名詞)を切り出すようになるのかを明らかにするための実験を実施、データ収集を進めるとともに、2)言語獲得期の子どもはいつから、対象に対するラベルづけの発話と、対象に対する(好悪などの)態度を表明する発話(感嘆詞など)とを区別して適切にラベルを学習していくようになるのか、また、3)幼児は、言語内容と話す調子(抑揚、音色など)がそれぞれ異なる感情を示唆している発話に出あって、言語内容と話す調子のいずれに基づいて話者の本当の気持ちを読み取ろうとするのか、という問題について検討するための実験パラダイムを開発し、予備的なデータの収集を行った。1)では、日本語環境で育つ子どもは生後15か月までには、助詞「が」を手がかりとして、その直前にある単語を発話の中から適切に切り出せるようになっていることを見出した。2)については予備的なデータ収集を通じて、子どもは少なくとも生後12か月までには両者を区別し、対象と結びつけるべきラベルは前者の発話のみから学習するようになっている(後者の発話やそこに含まれる単語は発話時に話者の目の前にあった対象と結びつけることはしない)との結果が得られそうであるとの見通しを得た。3)については、実験の結果、幼児期の子どもは、言語内容と話す調子(抑揚)それぞれが示唆する感情が異なる発話を聞いて、主に言語内容にもとづいて話者の気持ちを推測するようなバイアス(レキシカルバイアス)を持つことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、予定していた研究については予定どおり実施でき、一定の知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
成果を、国内外の学会や学術雑誌に発表していくとともに、これまで得られた見通しに基づいてさらに研究を展開していく。特に、上の1)の成果により、日本の子どもが助詞を手がかりとして発話から単語を切り出せるようになる時期がほぼ確定できたので、次年度は、そのことをうけて、子どもが助詞や活用語尾などを手がかりとして、発話から切り出した単語を名詞や動詞などの統語カテゴリーに分類するようになっていく時期や、その統語カテゴリーの性質などについて検討を進めていく。2)については、より低月齢の子どもを対象として実験を実施し、ラベルのような(話者や状況が変化してもラベルづけされる対象がありさえすれば適用可能な)情報の含まれる発話と、感嘆詞のような(その話者が特定の状況のもとでその対象に示す態度という意味で適用可能な状況が限定された)発話を、いつから区別するようになるのかについて検討を進める。3)についても、幼児期の子どもはなぜレキシカルバイアスを示すのかについて、乳児から幼児への移行期、また、幼児から児童への移行期をターゲットにした研究を実施し、明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
乳児実験室の入っていた建物に、H28年度に耐震改修工事が入ることになり、H27年度末はその移転作業で、乳児実験の実施やコーディング作業などがスローダウンしたためと考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
通常より少しペースをあげて乳児実験を実施し、またデータの整理を行っていく。
|
Research Products
(9 results)