2015 Fiscal Year Annual Research Report
認知行動療法の疾患別ワークショップの効果研究と心理士への普及
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25285190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹野 義彦 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60179926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知行動療法 / 臨床心理士 / ワークショップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国の臨床心理士に対して認知行動療法と科学的でエビデンス・ベーストな臨床心理学を普及させるために、欧米でさかんになっている認知行動療法について、不安障害・うつ病・統合失調症・ストレス疾患など、疾患別に特化した認知行動療法を開発し、ワークショップに取り入れることが目的である。 本年度の研究実績について、疾患別に述べると、まず、うつ病に関しては、反芻や内省が抑うつに大きな影響を与えることを実証し、脱中心化(Self-distancing)と呼ばれる方法が抑うつを軽減することを調べた。また、注意バイアス変容法を用いた抑うつ軽減法について基礎研究をおこなった。次に、不安障害については、思考抑制に関するメタ認知的信念が侵入思考に与える影響を立証した。さらに、統合失調症については、ブリティッシュ・コロンビア大学医学部のトッド・ウッドワードとマヘシュ・メノンを講師として呼び、日本でメタ認知トレーニング全国研修会をおこなった。 また、研究協力者とともに有斐閣から『臨床心理学』を出版し、わが国の臨床心理学に認知行動療法や科学者-実践家モデルを定着させることの重要性を主張した。海外で実際におこなわれている認知行動療法について調べるために、研究代表者は、アジア認知行動療法会議(ACBTC)において欧米の認知行動療法家がおこなうワークショップに参加して、認知行動療法の技法に習熟し、最新の情報を収集した。また、日本認知療法・認知行動療法学会、日本認知・行動療法学会、日本心理学会、日本心理臨床学会、日本不安症学会などの学術大会において、認知行動療法と普及についてのシンポジウムやワークショップを多数開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要で述べたように、うつ病に関しては、反芻や内省が抑うつに大きな影響と、脱中心化(Self-distancing)法や注意バイアス変容法を用いた抑うつ軽減法について基礎研究をおこない、大きな成果を得た。これらの研究は、認知行動療法がなぜ効果があるかというメカニズムの問題を認知心理学の立場から検討したものであり、大きな意義がある。また、不安障害については、思考抑制に関するメタ認知的信念が侵入思考に与える影響を立証した。さらに、統合失調症については、ブリティッシュ・コロンビア大学医学部のトッド・ウッドワードとマヘシュ・メノンを講師として呼び、日本でメタ認知トレーニング全国研修会をおこない、多数の参加者を得た。 こうした点から、疾患別の認知行動療法についての基礎研究やワークショップについて、おおむね順調に進展していると判断できる。 また、これも研究業績の概要で述べたように、研究代表者は、アジア認知行動療法会議(ACBTC)において欧米の認知行動療法家がおこなうワークショップに参加して、認知行動療法の技法に習熟し、最新の情報を収集した。また、多くの学術大会において、認知行動療法と普及についてのシンポジウムを開催した。 こうした点から、わが国の臨床心理士に認知行動療法を普及させる活動についても、おおむね順調に進展して
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、おおむね順調に進展していると判断できるので、今後も研究と活動を継続したい。認知行動療法について、疾患別に特化した認知行動療法を開発し、ワークショップを開発していきたい。また、海外の代表的な研究者・臨床家を招いて、海外の第一線の認知行動療法のワークショップをおこない、それを我が国に定着させたい。認知行動療法のワークショップの技法について、欧米の認知行動療法関係の学会に参加し、ワークショップに参加して、技法に習熟し、最新の情報を収集する予定である。また、実際に多くの学会でワークショップを開催し、それについてのシンポジウムなども積極的におこなっていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初、「その他」の使用を少し多めに計画したが、実際には次年度の使用に回すことにしたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度分の「その他」の使用額を次年度に繰り越して使用する。
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