2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25285196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
川野 健治 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所自殺予防総合対策センター, 室長 (20288046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 大輔 北海道教育大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50455416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自殺 / 文化比較 / 態度 / 言語心理学 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
目的は、自殺への許容的な文化の特徴の把握のために、心中、切腹など美学的に表現された映画等を題材とし、日本人が自殺のどのような側面を肯定的に評価するのかを明らかにすることであった。映画を用いた文化的対話法(山本・姜,2010)を参照し、日本人2名、および外国人留学生4人(中国、韓国、ドイツ、イギリス)からなるグループにより、映画「ラストサムライ」視聴後、討論を行った。内容を分析したところ、自殺に対する肯定的な表現として勇気・強さ、英雄的、美しい、格好良い、名誉、責任、忠誠、ロマンティックという表現が用いられた。他方で、「逃げるため、楽になるため」の「現代の自殺」については、「迷惑・無責任・逃げ」という否定的表現が用いられた。大義などの理由付け、感情移入しやすいストーリー、自分には起こらないといった認知の有無が、肯定的・否定的表現を用いる際に影響していると分析された。この結果は、日本心理学会で発表が予定されている。ただし、想定していた発言者の文化的背景との対応が明確にできなかったため、データ収集の継続を中断し、デザインの再検討を行った。 他方、平成26年度に予定されている自殺の許容性についての二国間比較質問紙調査について、米国で会議を開催し、その後、調査項目の絞込みを終えることができた。 さらにこの会議において、両国間での自殺についての比喩的表現(メタファー、メトニミー)の分析が、今後の文化比較のツール作成に有効である可能性が示唆されたため、まずは日本語について、既存の調査データの再解析(テキストマイニング)を行った。これは国際学会で発表を予定している。さらにこれについて、英語圏との比較研究の可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映画を用いた文化的対話法を参照したグループインタビューについては、1ケースを実施し、今後の研究につながる最小限の成果は得られた。しかし、研究方法のデザインの見直しが必要となり、やや遅れている。ただし、それを補う別様の可能性として、既存データのテキストマイニングを行い、一定の成果を得ることができた。また、26年度以降に実施予定の調査研究について、予定以上に準備を進めることができた。これらを総合的に評価すると、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
グループインタビューについては、あらなた研究デザインと協力サンプルについて、結論を出した上で、あらためてデータを収集する。 26年度に予定した研究のうち、国際比較質問紙調査は、対象集団の選択について米国側と慎重に協議したうえで、年度内実施を目指す。あらたに派生した比喩表現の研究についても、米国での実施について準備をすすめる。 同じく26年度に実施していた実験研究については準備をスタートさせるが、先の国際協力関係を優先し、場合によっては実施は27年度に先送りすることも視野にいれておく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最も大きな要因は、グループインタビューの研究デザインの再検討が必要となったため、必要な物品等の購入が遅れたためである。 国際比較の質問紙調査の実施が中心になる。グループインタビューについては、デザインを再検討し、その他の研究と併せて、申請金額に見合った範囲内で、最大の研究成果が得られるように配慮しながら、実施する。
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