2016 Fiscal Year Annual Research Report
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25285196
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川野 健治 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (20288046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 大輔 中京大学, 心理学部, 准教授 (50455416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自殺 / 文化比較 / 態度 / 自殺予防教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の社会・文化的特徴を含む自殺の許容性の内容と構造を明らかにするために、複数の研究を進めた。 1.日米比較調査:日米の自死遺族(米国330、日本51)を対象に調査を行い、2016年5月の国際自殺予防学会で最初の報告を行った。自死遺族の自殺へのスティグマはメンタルヘルスに影響していること、遺族会への参加がスティグマを緩和することなどが確認された。 2.日本一般調査:1.を元に日本の一般サンプルを対象とした調査を実施した。インターネット調査会社に登録する20代~70代の1800名を対象に、自殺の美化項目を含む態度尺度、自殺念慮、K6、死への態度尺度、また属性変数を尋ねた。分析の結果、意識でレベルでの自殺の許容性がうつなどの心理変数と相関を確認した(2017年度7月の国際自殺予防学会、11月の国際自殺予防サミットで報告予定) 3.潜在連合テスト:2.を受けて、無意識レベルでの許容性を検討する手がかりを得て、潜在連合テストの準備に着手した(2017年度11月の国際自殺予防サミットで報告予定) 4.SOSS尺度の作成:SOSS尺度日本語版案を作成し、妥当性検討のためのデータ収集を行った(2017年度7月に国際自殺予防学会で報告予定) 5.自殺予防教育:効果測定を行った。ある基礎自治体の4つの中学校のうち、1校でプログラムを実施し、あと3校を対照群とした準実験の形式である。プログラムのショートバージョンを作成したが、ショートバージョンでも一定の効果があること、ただし領域が限定されているなど限界も確認された。2016年7月の国際心理学会で4件連続発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日米比較研究および一般サンプル調査の実施および分析はスケジュールどおり実施された。自殺予防教育の効果測定も実施された。またそれらは、国際学会等で報告している。他方で、予定していたグループインタビューデータは、課題を検討の末、期待される効果が認められないことから見送ることとし、自殺への態度構造を背景とした表現研究に切り替えた。27年度は、申請者の所属異動に伴いスケジュールに一部遅れが生じたが、28年度にもその影響が残ったことから、潜在連合テストの実施などが予定より遅れている。ただし、29年度に十分実施可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.オリジナルの自殺態度尺度との中程度の相関を示したSOSSには美化項目を加えて日本語版を作成したが、その妥当性検討および、米国データとの比較研究を行う。 2.上記1.の分析から正当化・美化項目が心理変数と弱い相関を示すことを手がかりに、潜在連合テストを行い、意識レベルの許容性とあわせて、無意識レベルでの許容性を検討する。 3.自殺への態度構造を背景とした表現形式の問題として、現代の日本における自殺の言語表現、映画表現について検討を加える。 4.これまでの研究成果をもとに、自殺予防教育プログラムについて再度検討を加えるとともに、日本における自殺への許容性について総合的に検討する。
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Causes of Carryover |
申請者の所属異動にともなう研究の遅れ分が完全に解消されなかったこと等から、順送りで執行が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各研究の課題が明確になったことから、国際比較研究、SOSS妥当性研究、潜在連合テストを用いた研究、自殺の表現形式研究をそれぞれ分担研究として、各研究を計画的に執行する。
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