2014 Fiscal Year Annual Research Report
感覚情報と運動の実時間同期メカニズムの解明-発声模倣能力を手掛かりにした研究
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25285198
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
関 義正 愛知大学, 文学部, 准教授 (50575123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一方井 祐子 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (00709214)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 発声模倣 / リズム同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「発声模倣能力」がリズム同調能力の基盤となっている、とする仮説を検証することにある。さえずるトリの一種であるジュウシマツについてはオスのみに、この「発声模倣能力」があり、メスにはそれがない。また、それに対応して、オスにのみ発声模倣能力に関わるより発達した神経系が存在する。そのため本研究の仮説を検証するために、この動物種を用いることには同種内での直接比較が可能であるという利点がある。 当該年度は前年度末より開始したジュウシマツのオスとメスを用いた予備実験について詳細なデータ解析を行った。ジュウシマツはオペラント条件付けの技術を用い、一定のテンポで提示される視聴覚刺激(3kHz純音とLED照明)に合わせてLEDをつつく訓練を受けた。刺激呈示のタイミングについては600ms,900ms,1200ms,1500msの4種類のインターバルを設定した。 予備実験におけるつつき行動のタイミングを分析した結果、前年度末の時点ではオス・メスともにリズムを予測するような行動は見られないと考えていたが、より詳細な分析を行った結果、オスについてのみ、弱いながらもタイミングを予測するかのようなリズミカルなつつき行動が生じていたことが分かった。そのため、また、被験体の数を増やして、ジュウシマツにおける本実験を開始した。当該年度末において、この実験は継続中であり、堅固な再現性を確認するためのデータを獲得しているところである。なお、予備実験ではあったものの、結果は日本動物心理学会大会にて、口頭発表を行った。 また生理実験に関わる環境の整備を行なった。脳の損傷手術を行うための機材一式の選定、標本作成に必要な機器の購入・設置、それらに必要な薬品の調達その他、動物の生理実験に関わる環境をすべて整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関変更があり、動物の飼育・管理・実験に関わる施設すべての整備をゼロから始める必要があったため、当初の予定からはかなり遅れてしまった。しかし、当該年度の秋に実験室が使えるようになってからは、実験系の再セットアップなども順調に進めることができ、冬季以降、行動実験については再開することができ、実験データを取得することができるようになった。また、この再セットアップに際して、実験装置の改良も行い、より精度の高い実験系ができたと考えており、次年度の研究に弾みをつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取得・解析中の結果次第であるが、もし予備実験の結果が再現され、オスとメスの行動に差がみられる、つまり発声模倣能力の有無が与えられるテンポに合わせたリズミカルな運動生成に関わることが確認できれば、ジュウシマツにおいてより多くの被験体を使った実験を行い、大規模な生理実験を推進する。 しかし、再現性が低いという結果、つまりジュウシマツについてはオス・メスともにリズムに合わせた運動生成ができない、という結果、あるいはオス・メスともにそれができる、という結果が得られた場合、次の2案を検討する。まず、前者の結果であった場合には、リズミカルな運動生成がより得意であると考えられるセキセイインコおよびこれまで用いてきたような単調なリズム以外の刺激を用いた実験を行う。これにより、より詳細な方法でヒトのリズム同調と比較し得る実験データを取得できると考えられる。後者の結果が得られた場合には、ハトのようなオス・メスともに発声学習能力を持たない動物を用いて実験を行う。もし、発声学習能力をもたないジュウシマツのメスがリズムに合わせた身体運動の証拠を示した場合、あるいはこれは発声学習に関わる神経系の痕跡がそれを可能にしている可能性があるため、この実験が必要になる。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関変更があり、当該年度は後半になるまで実験環境整備実験が進められなかったため、実験のための試薬、消耗品、人件費の支出がなかったため。また、その結果として、発表のための旅費その他の支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者の所属機関変更にともなう計画の遅れを取り戻すために、本研究のための業務に専従する研究員1名を雇用する。そのために要する人件費として、200万円程度を充当する。また、計画では前年度おこなう予定であった実験を加速するため、消耗品の支出が増加すると考えられ、そのために100万円程度を充当する。
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Research Products
(1 results)