2014 Fiscal Year Annual Research Report
注意欠陥/多動性障害における注意機能特性の比較認知科学的解明と診断の確立
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25285201
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船橋 新太郎 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00145830)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 意識、認知、注意 / 発達障害 / 近赤外分光法 / 前頭連合野 / 作業記憶 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の障害の認知基盤は未だ明らかではない。ADHD児の行動パターンが前頭連合野損傷者でみられる脱抑制や実行機能障害に酷似していること、ドーパミンなどのカテコールアミンは前頭連合野に多く、またその変化は前頭連合野の機能発現に大きく影響することなどから発達初期に前頭連合野で生じたカテコールアミン作動系の慢性的な変化と不全がこの障害の主要因ではなかと考えられる。そこで「ADHDは発達初期に前頭連合野で生じたカテコールアミン作動系の慢性的な変化による実行機能障害である」という仮説を立て、マカクザルとヒトを対象としてこれを検証し、認知特性を解明すると同時に診断法の確立を目的とする。 2年目となる本年度では、初年度に行ったニホンザルでの実験をさらに進展させるとともに、ヒトでの実験も開始した。具体的には、ニホンザルでの心理課題遂行のために必要であるモンキーチェアに対する訓致が終了し、予備実験となる視覚刺激(サル、ヘビ、植物、食べ物の4つのカテゴリ分けされた写真の提示)に対する大脳皮質活動の反応を近赤外分光法(NIRS)を用いて記録を行った。その結果、これらのカテゴリに特異的な活動変化のパターンが前頭連合野に見られるといったこと見出した。 また、サルでの実験と平行して、ヒトでの予備実験を開始した。ADHD児のみでは被験者数が足りないので、より広義の発達障害と診断(ADHD、自閉症スペクトラム等)された児童を対象に、予備実験を行った。作業記憶課題を含む、3種類の認知課題を行ってもらい、ELISA法により計測した毛髪中のストレスホルモン量との相関を調査した結果、空間作業記憶の課題成績とストレスホルモンとの間に有意な相関が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度はおおむね順調といえる。その理由として、 (1)サルでの心理実験にはモンキーチェアの訓致などトレーニングに多大な時間を要するが、現在、3頭のニホンザルを対象にモンキーチェアの訓致が終了した。 (2)ヒト用に開発された光トポグラフィー計測装置をマカクザルに使用できるように工夫を行い、視覚刺激に対する脳活動の反応を計測した。 (3)発達障害児を対象に心理課題の予備実験を開始した。 (4)ELISA法を用いてのストレスホルモン計測を実際に発達障害児を対象に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、現在継続中の実験を本研究の最終目標である、作業記憶課題作業中のサルの大脳皮質神経活動を計測し、ADHD児を含めたヒトでの同様の心理課題作業中の脳活動計測との比較に向けて、さらに推進していく。そのためにまず、 (1)ヒト用に開発された光トポグラフィー計測装置をニホンザルに使用し、作業記憶課題のトレーニングを開始し、作用記憶課題遂行が可能となった段階で光トポグラフィーによる作業記憶関連脳活動計測を行う。 (2)ヒトでの予備実験の被験者数(とりわけADHD児)を増やし、また比較対照となる健常児でも実験を行う。 (3)作業記憶課題をヒト健常児とADHD児で行ってもらい、光トポグラフィーを用いて脳活動計測を行う。 (4)健常児とADHD児からの毛髪サンプルの採取し、ELISA解析によるホルモンレベルの測定を行う。
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Causes of Carryover |
使用している計測機器の不具合が見られたため、修理費用として計上したが幸いにも不具合の解消がなされたため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において研究推進を加速させるため、研究調査のための出張費用および研究補助員の人件費、成果論文の校正・掲載費用に充てる。
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Research Products
(7 results)