2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25285202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 研三 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40183818)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 感覚・知覚・感性 / 多感覚統合 |
Research Abstract |
自己運動の方向は主に視覚と前庭覚により知覚されるが,それぞれの示す方向が一致しない場合,人間の知覚系はそれらの情報を統合して中間の値を知覚することがある。このような自己運動の知覚における視覚と前庭覚の統合過程の解明を目的とし,本研究計画では(1)視覚と前庭覚の統合限界の測定,(2)視覚と前庭覚の統合におけるベクトル合成仮説の検証,(3)視覚と前庭覚の統合におけるベイズ推定モデルの検証,(4)多義的視覚事象に与える前庭覚刺激の影響の検討,という4つのサブテーマに取り組んでいる。 最初に,これまでの研究で得られた知見と実績をもとに,サブテーマ(1)の視覚と前庭覚の統合限界の測定を目指して,現有の装置を改良・再調整して心理物理学的な測定を開始した。具体的には,自然な加速度を前庭覚に呈示する振り子型可動椅子を用い,それぞれの身体運動情報の方向差を多段階に制御することで,両者が統合される範囲と,統合されずに二者択一の反応が優位となる範囲を心理物理学の手法で測定している。観察者によっては酔いが起きやすい条件のため,振り子型可動椅子への慣れと「酔い」への耐性の高い観察者を確保しつつ,実験を継続中である。 同時並行して,視覚情報から自己運動方向を知る手がかりとなる視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)に関する研究を開始した。ベクションは視覚と前庭覚の統合過程が関与する錯覚であるが,その特異な例として,誘導刺激と同方向への身体運動を感じる逆転ベクションを取り上げ,従来報告されていた上下左右方向だけでなく,奥行方向についても生起することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画では期間内に取り組む4つのサブテーマのうち,第1のサブテーマである「視覚と前庭覚の統合限界の測定」を平成25年度に終了させる予定であったが,実験設備の再調整とRAの確保,および「酔い」に対して耐性のある参加者の確保に時間を取られ,実験の開始が遅れた。そのため現在も実験を継続中であり,研究全体の進捗状況はやや遅れ気味であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って4つのサブテーマで取り上げた課題を推進すると同時に,視覚と前庭覚の統合過程が関与する錯覚である視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)への取り組みを強化する。また,視覚と前庭覚の統合過程の代表的研究者であるLaurence Harris教授を招聘し,本研究計画を推進するための助言をもらいながら,能動的運動課題における視覚と前庭覚の統合に関する共同研究を具体化させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実際に研究費が使用可能となった時期が年度当初からずれ込んだことと同時に,実験装置の再調整に手間取り,年度後半まで実験開始の目処が立たなかった。そのため,RAと実験参加者の確保が遅れ,謝金等の支出が予定を大幅に下回った。, 実験の遅れを取り戻すために,RAを複数確保して実験の実施日数を増やす予定である。次年度使用額は,増加が見込まれるRAへの謝金として使用する予定である。
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