2015 Fiscal Year Annual Research Report
生理反応の複数人同時測定による,集団内・間相互作用における潜在的心理過程の解明
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25285206
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
片山 順一 関西学院大学, 文学部, 教授 (80211845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
木村 健太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 自動車ヒューマンファクター研究センター, 研究員 (40589272)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 集団意思決定 / 社会的インタラクション場面 / 親密度 / 集団内相互作用 / 事象関連脳電位 / 生理反応 / 複数人同時計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,集団内・集団間の相互作用にかかわる認知機能とそれを支える生物学的メカニズムを明らかにすることである.昨年度までの研究では,ギャンブル課題において多数決やリーダー制といった異なる集団意思決定方式を取り入れた実験を実施することで,集団内の他者との相互作用は,集団意思決定に対する責任を変容すること,この責任の変容は選択結果の重要性の評価を反映するフィードバック関連陰性電位(FRN)に反映されることを明らかにした. 本年度は,集団メンバー間の親密度が集団意思決定に伴う結果の評価に影響を及ぼすか否かを検討した.実験では,過去の実験で使用した3名の小集団が多数決に基づきカードを選択するギャンブル課題を用いた.親密度は,ギャンブル課題を実施する前の共同作業の有無により操作した.3名一組とする8集団を,課題前に3名で共同作業を行う親密度高群,同じ作業を3名が個別で行う親密度低群の二つの群に分けた.この操作を行った上,課題遂行中の3名から同時に脳波を測定し,集団意思決定に伴う結果の提示により生起するERPを検討した. その結果,ギャンブル課題において集団の決定が「はずれ」結果時には,「あたり」結果時に比べて選択結果の重要性を反映するFRNの振幅が大きかった.加えて,「はずれ」結果時のFRNの振幅は,3名が同じカードを選択した全会一致時において親密度低群に比べて親密度高群で大きかった. FRNは選択結果の重要性を反映することから,本研究の結果は,全会一致時では集団意思決定に伴う結果の重要性が親密度低群に比べて親密度高群で高いことを示唆する.全会一致時には,他者との意思決定の共有により責任の分散が生じるため,集団意思決定に伴う結果への個人的責任が低減する.この観点から,本研究の結果は,集団メンバー間の親密度の高さは他者との意思決定の共有による責任の分散を妨げ,選択結果の重要性を高めることを示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3名の被験者から同時に脳波を計測する技術を用いて,ギャンブル課題における多数決やリーダー制といった異なる集団意思決定方式での成果に加え,集団メンバー間の親密度の効果を検討し興味深い結果を得ることができたことから,このように判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,多数決による集団意思決定(H25年度),リーダーが集団の意思決定を行う場合(H26年度),集団メンバー間の親密度の効果(H27年度)について検討を行ってきた.集団内相互作用については成果が得られたものと判断し,今後は集団間相互作用検討の基礎を確立する. 具体的には,これまで成果を挙げてきた複数人から同時に脳波を記録・解析する技術を活かし,2名の集団2つがゲームあるいは認知作業を同時に行う際の4名の脳波を同時に計測する事態を確立する.集団間相互作用を検討するのにふさわしい課題の選定を含め,脳波の解析手法の確認と新たな分析法開発の可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに執行してきたと考えている. 次年度使用額は大きくはなく,当該年度に無理に執行するのではなく次年度で有効に使用することにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は集団脳波実験のデータ分析に関わる謝金に充てる予定である.
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Research Products
(12 results)