2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの「体制移行国」における高等教育制度の変容に関する比較研究
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25285230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南部 広孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70301306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 均 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50211983)
大塚 豊 福山大学, 大学教育センター, 教授 (00116550)
楠山 研 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 准教授 (30512016)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 体制移行 / アジア / 高等教育 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
4か年の研究計画の第2年度にあたる平成26年度には,前年度に引き続き,①「体制移行国」の類型化に関する理論的検討,②対象国の高等教育制度に関する文献資料の収集・分析,③対象国の高等教育制度及び高等教育改革に関する現地聞き取り調査という3つの作業を行った。 ①に関しては,政治経済学分野での「体制移行」に関する理論的研究と教育学分野で「体制移行」の観点を含んで展開されている研究の収集・分析を継続した。その際,類型化枠組みの構築をめざすことから,必ずしも本研究課題の対象国だけでなく,広義の体制移行が進む国も視野に入れた。あわせて,制度のありかたに関する検討を深めるために,比較政治学分野で展開されている新制度論的アプローチについての検討も進めた。これらの作業を通じて,研究開始時点で想定した「体制移行国」類型について批判的に検討し,新たな類型化枠組みの構築にとりかかった。 ②及び③については,研究代表者,研究分担者(4名),連携協力者(1名),研究協力者(3名)で分担して作業を進めた。多くの対象国については初年度すでに国家体制,高等教育制度の概要,近年の改革動向について資料収集が行われており,第2年度はそれを継続した。また,本研究課題の経費による訪問のほか,その他さまざまな機会を利用して,対象国のうち,中国,ベトナム,カンボジア,ラオス,ミャンマー,バングラデシュを訪問し,政府関係者,大学関係者,研究者などを対象とした聞き取り調査及び一時資料の収集を実施した。直接訪問することが難しい北朝鮮に関しては,中国及び韓国で関連資料の収集を行った。 平成26年11月には,研究枠組みの確認を行うとともに,各研究者が分担している対象国の情報を整理することを目的として研究会を開催した。また,平成27年3月には2か年の研究成果をまとめ,中間報告書を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4か年の研究計画は,研究開始前の準備と各研究者のこれまでの国別研究をふまえて構想されており,大きく前期2年と後期2年に分かれている。第2年度にあたる平成26年度は,初年度(平成25年度)の作業を継続しつつ,研究目的に沿った展開がなされた。「体制移行国」における高等教育変容に関する理論的検討では,政治経済学分野や比較教育学分野の関連先行研究の分析を継続するのみならず,比較政治学分野で展開されている新制度論的アプローチを新たに取り入れ,検討を深めることができた。ただし,類型化枠組みの確定までには至っていない。 国別の分析では,本研究課題に参加している研究者によって分担され,各国の国家体制及び高等教育制度の歴史的変遷と現在の状況,改革の動向などについて文献研究と現地での聞き取り調査を実施した。対象とした9つの国のうち,直接訪問することが難しい北朝鮮に関しては,当初の計画通り,中国及び韓国での情報収集が行われたほか,モンゴルを除く7つの国については初年度と本年度(第2年度)で少なくとも1度は現地聞き取り調査を実施できている。モンゴルだけは現地聞き取り調査ができていないが,同国についても国内での情報収集に努めるとともに,中国語での関連文献の収集を行った。 こうした作業の成果として,当初の計画通り,第2年度末(平成27年3月)に中間報告書(総計285頁)を刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
4か年計画の前半2年間(初年度及び第2年度)はおおむね順調に進展してきているので,今後も研究計画にしたがって研究を進めていく。全体的な理論枠組みについては,これまでの検討を継続しながら,本研究課題の知見が明示できるものとなるよう精緻化する。対象国についての国別分析については,中間報告書を一つの到達点としつつ,横断的な視点から情報収集・分析をさらに進めるとともに,上記の理論枠組みとの関連で必要となる情報の収集を行う。現地での聞き取り調査や一次資料の収集は,当該国・地域の政治的社会的状況によっては実施できないおそれもあり得るため,安全面に十分注意しながら訪問計画を立てる。訪問調査の実施が困難な場合には,国内外のネットワークを利用した情報収集やよりきめの細かい文献研究などによって補完する。また,2年間の作業で一定の成果が得られたことから,第3年度以降は積極的に成果の公表を行,研究内容のよりいっそうの深化を図ることとする。
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Causes of Carryover |
本研究課題では,主たる研究手法の1つとして対象国での現地調査(聞き取り調査,一次資料収集)がある。第2年度(平成26年度)に予定していた現地調査のうち,モンゴルでの調査は日程を詰めることができず,実現しなかった(代替的に文献研究を進めた)。また,いくつかの国については,担当者が本研究課題以外の機会を利用して一次資料の収集などを行うことができたため,本研究課題での作業としては文献研究に切り替えた。そうしたことから,当初の経費使用計画からの変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モンゴルでの現地調査は第3年度での実施を計画しており,すでに日程の調整を始めている。また,他の国についても,第2年度までの文献研究をふまえて現地調査を行うことにしている。あわせて,収集した文献資料の整理などのために謝金として使用する。
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Research Products
(2 results)