2013 Fiscal Year Annual Research Report
多層指導モデルによる学習困難への地域ワイドな予防的支援に関する汎用性と効果持続性
Project/Area Number |
25285262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 |
Principal Investigator |
海津 亜希子 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 教育支援部, 主任研究員 (00342957)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 多層指導モデル / 学習困難 / 予防的支援 / 地域ワイド / 通常の学級 / 特別支援教育 |
Research Abstract |
1.多層指導モデルMIMの地域ワイドでの実践の拡大:本研究の最大のテーマである「地域ワイド」にて多層指導モデルMIM(学習困難を中心とした通常の学級における様々なニーズに対応しようとする予防的支援モデル)に取り組むことをめざし,教師らにその意義・手法について理解・啓発を促すことを一つの目的とした。具体的には,実際に地方自治体(A市,B市)で研修を行ってきた知見を基に「研修システム」のモデル案を作成した。加えて,各学校でのMIMの実践をいかに地方自治体として支えていくかについても検討し,その体制整備に向けた条件および効果・課題の整理を行った。 2.読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMの効果の追跡:A市では,市内全小学校(22校)でMIMを導入しているが,小学校1年生時にMIMを受けた児童が,現在,2,3年生になっている。そこで,これらの児童に対し,追跡調査を行っている。具体的には,年度末に実施している効果検証にあたって,当該学年である1年生だけでなく,MIMによる指導が1年間経過した2年生,および2年間経過した3年生についても,効果検証の対象とし,分析を行っている。さらには,次年度からMIMを地域内全小学校で導入予定のB市(17校)についても,1年生から3年生に対して対照群としての参加を促し,MIM実践地域との比較対照群としてのデータ収集が実現できた。このデータは,比較対照群としてだけでなく,次年度から実施する自地域内でのMIMの効果検証のためのプレテストとしての意義も持たせた。 3.Web上での多層指導モデルMIMに関する広場(フォーラム)の開設:フォーラムのコンテンツとなるMIMを実践している学校や教師から寄せられた質問や,それに対する回答,実践校による活用実践の工夫例について収集および整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当年度は,多層指導モデルMIMを一地域での実践から,より広範囲での実践へと広げるべく準備を行ってきた。その中での成果として大きかったのは,3年前からMIMを市内全小学校で実践しているA市の実践を「各校の実践事例のまとめ」,「教育委員会による年間を通して企画・運営された研修プログラムの提案および自治体としての取組に関する課題・成果の整理」,「MIM地域コーディネーターの役割の整理」等としてまとめ,様々な形で公表したこと(理解・啓発を目的とした研修での発表や学会におけるシンポジウムの開催)が挙げられる。 このことが,次年度以降,導入を検討している地域にとってのヴィジョン構築に貢献したようで,次年度多層指導モデルMIMを自治体として導入したいと申し入れのあった地域が既に現段階で10を超えたというのは大きな成果といってよいと思われる。次年度は,こうした地域からデータを得るとともに,自治体での実践を充実したものとするための支援を行っていく予定である。 また,読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMによる指導を小学校1年生時に受けた児童の効果に関する(小学校2年生以降)追跡調査については,まだ分析途中であるが,MIMを実践した子どもの群については,2,3年生になっても尚,全国平均よりも高い平均値がみられている。ともすると,平均値の高さの背景には二極化の様相がみられたりもするが,本データにおいては,低学力群の割合が減り,平均および高学力群の方へ移行するといった右寄りの傾向として見られている点も研究成果としては大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
①「地域ワイドでの多層指導モデルMIMの汎用化」については,これまで築き上げてきた体制整備の手法に関する追試として,さらに異なる条件を有する地域へと適用を拡大する。これにより,多層指導モデルMIMを通常の学校に導入するための自治体による体制整備の在り方に対する汎用化の推進条件,可能性と課題について更に詳細かつ実現可能な提案を行う。その際,一つの手法に限定することなく,各自治体の状況に合わせ,多様性を備えた形での提案を行う。 ②「読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMの指導を小学校1年生時に受けた児童の小学校2年生以降における効果の追跡」については,前年度と同様,小学校1年生時に多層指導モデルMIMを受けた児童の効果を検証するため,年度末にデータを収集する。さらには,小学校の全学年が小学校1年生時にMIMを受けたことになる学校も存在するため,その学校については,追跡調査を発達段階とともに詳細に分析し,知見をまとめる。 ③「Web上での多層指導モデルに関する広場(フォーラム)の開設」については,いよいよ試行的開設を行う。「広場(フォーラム)」は,広く全国の教員らが情報活用できるようフリーアクセスにする。 ④「異教科多層指導モデルMIMの汎用化」については,算数版のMIMとして開発したアセスメントMIM-PM(めざせ計算名人)に関するデータの整理・標準化を行う。これにより,読みは得意であっても,算数(計算)に関してニーズのある子どもを把握することが可能になると考える。それがひいては,教育的ニーズのあるより多くの子どもを取りこぼすことなく,確実な支援へとつなげ得ると考える。
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Research Products
(6 results)