2016 Fiscal Year Annual Research Report
多層指導モデルによる学習困難への地域ワイドな予防的支援に関する汎用性と効果持続性
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25285262
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
海津 亜希子 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, インクルーシブ教育システム推進センター, 主任研究員 (00342957)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育心理学 / 多層指導モデル / 学習困難 / 予防的支援 / 地域ワイド / アセスメント / 特別支援教育 / 学習障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
一つ目に「多層指導モデルMIMの地域ワイドでの実践の拡大」における成果では,地域ワイドでMIMを導入してきた14の自治体の報告(北九州市,飯塚市,嘉麻市,倉吉市,彦根市,大阪狭山市,伊那市,足立区,葛飾区,南房総市,いすみ市,鹿沼市,大田原市,三春町)を「多層指導モデルによる学習困難への地域ワイドな予防的支援」という実践成果報告書としてまとめた。MIMに取り組んでいる自治体はもとより,今後MIMを導入している自治体にとっても有益な情報に富む報告書となった。 二つ目の成果は,研究成果の啓発・普及を目的とした多層指導モデルMIMに関するWebサイトでの情報発信,質的向上が図られた点である。MIMの取組を研究者として支える仕組みを整えるべく,MIMに関するWebサイトの開発・運用を行っている(「MIMとは」「MIMに関するニュース」「地域におけるMIM」「MIMに関する関連資料」「MIMに関するQ&A」等)。その中で「Webサイトに関するアンケート(有益さ等)」及び「MIMの実践に関する情報提供」も求めている。今年度,教育現場でMIMを実践している複数の教員から「MIMに関する教材や資料を作成したので広く活用して欲しい」等,Webサイトの質的向上に資する協力もみられてきており,双方向で充実させていくというWebサイトの目的が叶えられた。因みに昨年度のサイトへの訪問者数は述べ約3万8千件,ページ閲覧数は約36万件となっている。 三つ目は「異教科多層指導モデルMIMの汎用化」である。早期の段階での算数に焦点を当てたMIMの算数版のアセスメントを開発し,その妥当性,独自性をまとめた論文が学会誌に原著論文として掲載された。この研究では,算数にのみ顕著な困難さをみせる群は全体の5.15%であることが明らかになり,算数におけるつまずきの早期把握の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では大きく4つの下位研究課題を設定している。一つ目の「地域ワイドでのMIMの実践の拡大」においては,今年度作成した実践成果報告書に掲載している14地域に加え,さらに十数地域についても自治体の教育施策に位置づけたり,MIMに関する悉皆研修を組んだりと広がりをみせており,そうした自治体に対して知見提供等行っている。 「MIMに関するWebサイトの開設,運用」においても,随時情報の更新を行い,昨年度の述べ閲覧者数は約3万8千件,ページ閲覧数は約36万件となっている。また質的向上の面でも,ユーザーである教員の側から,新たな教材の提供等の申し出も見られてきており,当初から目的にしている「ユーザーとともに質的向上を図っていく」ことが実現できている。 「異教科多層指導モデルMIMの汎用化」では,早期の段階での算数に焦点を当てたMIMの算数版のアセスメントを開発し,その妥当性,独自性をまとめた論文が学会誌に原著論文として掲載された。この研究で明らかにされた「算数にのみ顕著な困難さをみせる群が全体の5.15%存在する」という知見は,殊に算数障害においての研究が少ないわが国においては有用なものになったと考える。 一方,「読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMによる指導を小学1年時に受けた児童の効果に関する追跡調査(小学校2年以降)」については,データの蓄積は年々なされているものの,現時点で分析・考察には至っていない。 以上のことから,下位研究4つの内の3件については,順調および当初の計画以上に進展していると思われるが,1つの研究については十分ではないため,総合して概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMによる指導を小学1年時に受けた児童の効果に関する(小学校2年生以降)追跡調査については,データは順調に収集・蓄積されているものの,その後の分析,考察,それらをまとめた論文執筆には至れなかった。そこで,今後はこの下位研究を最重要課題として位置づける。当該年度(平成28年度)の成果を検証する平成29年4月実施の標準学力検査のデータも加えながら,より精度の高い分析を行い,考察を行う。
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Causes of Carryover |
目下,研究目的の一つである多層指導モデルMIMの効果に関する追跡調査(縦断研究)を行っているが,これまで分析を行っている中で,前学年の達成度を測る翌4月実施のテストにおける意義の大きさを再認識しているところである。その結果,平成29年4月実施のテスト結果を分析に用いることで,より効果検証を精緻なものにし得るのではないかと考え,次年度も研究体制が組めるようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
読みの流暢性に関する多層指導モデルMIMによる指導を小学1年時に受けた児童の効果に関する(小学校2年生以降)追跡調査については,データは順調に収集・蓄積されているものの,その後の分析,考察,それらをまとめた論文執筆には至れなかった。そこで,今後はこの下位研究を最重要課題として位置づける。当該年度(平成28年度)の成果を検証する平成29年4月実施の標準学力検査のデータも新たに加えながら,より精度の高い分析・考察を行えるよう計画している。
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