2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25286010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋田 成司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60202529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェン / 非線形振動 / ナノリレー |
Research Abstract |
本研究では、ナノカーボン機械共振器において非線形振動の発生機構解明と制御の実現を目的とし、実験、分子動力学計算の両面から、光誘起熱歪みによる非線形応答、機械的歪みに起因した非線形応答、振動損失と非線形性の関係を明らかにし、これらを利用したQ 値の制御の可能性について検討する。 現有の測定系では線形振動の高感度測定は可能であるが、非線形振動の高感度計測も容易になるように測定系の改良を行った。(クロスドメインアナライザの購入)さらに、光干渉系や電気的な検出法での測定が可能なように改良を行った。また、広範囲での温度の因子を検討するために、高温対応可能な測定容器の開発を進めた。 カーボンナノチューブによるナノ機械振動子の光熱誘起歪みによる非線形応答に関して、バイメタル効果(論文1報)、系全体の熱緩和時間、光強度勾配に着目して詳細なデータを蓄積した。一方で、さらに高精度な解析のためには測定系の揺らぎをさらに抑圧することが必要である子が分かった。従来から報告されている機械的非線形性から来る共振の非線形応答に関して検討するために、非線形共振が発現する大振幅条件を容易に実現できる両もちハリの駆動方法を開発し、これがナノリレーへの応用が可能であることを見出した。非線形性の要因として、カーボンナノチューブの保持部分の振幅に依存した界面エネルギーが重要な因子である事を指摘し、保持力がvan-der-Waalsエネルギーと振動エネルギーの単純な差ではなく、振動エネルギーが等価的に熱エネルギーと同様に作用することを見出した。これに関して行った分子動力学計算および実験結果について論文誌に2報、報告した。 これらの結果を元に機械的なひずみに起因した非線形性についてナノカーボン系の特徴を抽出した。また、グラフェンに関しても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった下記の項目についてほぼ計画通りに研究は進展した。項目ごとに詳細を述べる。 ・測定系の改良:クロスドメインアナライザ(新規購入)による振動波形の周波数ドメインにおける解析を可能とした。また、現有の光学顕微鏡用クライオスタットへ100 MHz程度の高周波が導入可能となるように電気系を改良した。また、単層CNTやグラフェンFETによる電気的な共振特性測定系も同様の改良を行いその動作を確認した。 ・光誘起熱歪みによる非線形応答:バイメタル構造の振動子により光誘起熱振動が増幅されることを確認しこれが高精度な熱計測へ応用可能なことを見出した。また、大振幅条件では非線形振動することを確認した。 ・機械的歪みに起因した非線形応答:強光励起条件下での機械振動を行い振動特性を計測した。その結果、光誘起力や熱誘起力では説明できない周波数シフトや振動の増強を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、単層ナノチューブ、グラフェンの検討を進める。さらに、その他の低次元材料についても同様の検討を行う。 さらに、昨年度までに蓄積したデータをもとに光熱誘起効果と機械的に誘起した非線形振動をカップリングさせ新たな振動制御方法への展開を図る。また、ミクロな観点から分子動力学計算による理論解析を進め非線形性と損失との関係について明らかにする。 また、ナノカーボンや低次元材料の両持ちハリ構造の電界効果トランジスタを構成し、この電気的特性から振動を検出する。両持ちハリの場合には片持ちはりよりも強い非線形効果が期待できる。定常光照射により波長を変化させ共鳴光の効果を確認する。さらに、強度変調した光を照射し、機械振動と位相を詳細に測定し熱緩和について検討を進め、電荷による非線形性、熱による非線形性、機械歪みによる非線形について統合的に検討する。最後にこれらを利用したQ 値の制御の実現を図る。 これらの結果について学会や論文等で報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
測定系改良のための光学部品、電子部品(広帯域プリアンプ等)で在庫がなく代替品も無いためにH25年度内に納品不可能なものがあったため次年度に繰り越すこととした。 H25年度に購入を見送った光学部品、電子部品等の代替品をH26年度前半に購入する。
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