2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25286010
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋田 成司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60202529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノチューブ / グラフェン / 非線形効果 / ナノ機械システム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き測定系の改良を行った。特に光学的な検出では大きな誤差を生む要因となるナノスケールの試料ドリフトを、市販のナノ・ポジショナを画像処理によりクローズドループ化し、高い位置再現性と安定性(1時間当たり数nm以下のドリフト)を実現した。また、光干渉を用いた方法により振動状態のマッピングが可能なシステムを構築した。 本年度はグラフェンや2次元原子層膜のMoS2に関しても研究を開始した。光誘起熱歪に起因した非線形性だけでなく、電子線誘起の非線形性見い出した。これの原因として、大きな静電気力による局所歪であることを指摘した。また、この非線形性および距離に依存した力の制御により従来のナノチューブ機械振動子の室温のQ値(機械共振器の性能パラメータ)が約10倍向上する現象を見出した。さらに、単層ナノチューブの共鳴吸収に関して検討したが、熱による擾乱の影響が光の輻射力よりも極めて寄与が大きいことを明らかにした。 振動損失と非線形性の関係を明らかにするために、静電気力による引っ張り応力を誘起し共振状態を変調した。また、応力制御のために、振動子支持部の修飾(金属の酸化、原子層堆積法による極薄膜形成)を行った。 また、ナノチューブ機械振動子上に3nmのインジウムを堆積し共振周波数の温度依存性を計測した結果、アトグラムスケールの熱重量天秤測定が可能であり、さらに、バルクでは蒸発しない温度で薄膜状のインジウムは蒸発するものの、加熱過程で微粒子化するとバルクの状態に近くなり、低温で蒸発しないことを明らかにした。 これらの研究の過程でグラフェンントランジスタの異常な光応答を見出した。この現象は、グラフェンと接触する金属表面の酸化膜が重要な役割を果たしていることが分かった。また、光応答感度が市販の光電子増倍管程度と極めて高い感度が一枚の原子層で実現できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標である非線形性の解明だけでなく、電子線誘起による異常なQ値の向上など、これまで期待していなかった効果を発見した。さらに、グラフェン振動子の研究の過程で、電極界面を修飾することで単一光子の検出に迫る感度を示すことが明らかになった。以上のように、当初の目標は達成しつつ、目標以外にも重要な発見があったため当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.原子層膜への光照射効果 原子層膜を両もちはり構造の電界効果トランジスタとし、この電気特性から振動を検出する。この場合、片持ちはりに比べて強い非線形効果が期待できる。さらに強度変調した光を照射することで熱緩和および光の輻射力に関する検討を行い、電荷による非線形性、熱による非線形性、機械歪による非線形性について総合的に検討する。また、光熱励振によるパラメトリックな発振を目指す。集光ビームおよび光共振効果を利用することで振動の制御を試みる。
2.機械歪に起因した非線形応答と振動損失制御 前年度発見した機械歪に起因したQ値制御に関して分子動力学計算等の計算も加味して検討を進める。さらに、引っ張り応力下における非線形効果についても同時に検討を進める。
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Causes of Carryover |
RAとして学生を雇用予定であったが学内でRAとして雇用され、当該学生を雇用できなくなり人件費・謝金を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿先がOpen Accessとなり掲載料金が高騰しているためこれに充てる予定である。
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[Book] "Nanomechanical Application of CNT" in "Frontiers of Graphene and Carbon Nanotubes"2015
Author(s)
Seiji Akita (edited by K. Matsumoto) (Y. Ohno, T. Kato, K. Nagashio, D. Kondo, T. Otsuji, Y. Homma, R. Hatakeyama, K. Maehashi, T. Kamimura, K. Ishibashi, Y. Ohno)
Total Pages
289 (187-199)
Publisher
Springer
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