2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25286031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 裕行 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20314429)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / 基板 / DNA / STM |
Research Abstract |
平成25年度は、「1.グラフェン基板作成及びDNAの伸張固定の最適化・測定の高感度化とその機構の解明」を目標としていたが、【平成26度】第2年度 「2.前年の続き:分子指紋のデータベース化とDNA塩基-基板間相互作用の解明」 2-1 チミンとシトシンの電子状態指紋の見極め というのを前倒しで行った。色素ラベルされたCCCTTT(シトシン3ヶとチミン3ヶが連続した塩基配列)のDNAオリゴマーをCu(111)基板に固定し、STM観察およびdI/dV測定を行った。その結果、CかTにも、分子指紋となりうる状態密度ピークがVs=-2V付近にあることが分かったが、強度が低いため、プリン塩基を含んだランダムな配列、つまり、グアニンとアデニンを含んで場合は、プリン塩基の状態密度ピーク(Vs=-1.6V付近)の裾と重なるため、事実上識別に使うのは困難であることが示唆された。また、想定外な事象として、チャンバーのリークか汚染か原因はわからないが、数日か1週間程度の期間で、Cu(111)基板表面がコンタミに覆われてしまうことがあった。2009年度の教授退官以来、2度も装置の移転作業を行ったために、外部除振機構とベーク機構を喪失しただけでなく、機械的な衝撃でリークするようになった可能性もある 。ただし、これらに対する予算はないので、騙しだまし研究を遂行することにした。コンタミ(おそらくH2OやCOなど)はCu(111)よりも反応性の低いグラフェン基板であれば影響が少ないと考えられるので、グラフェン基板の重要性が再認識され、当初の予定通りにグラフェン基板の作成を行った。 マイカ基板上にNi(111)薄膜を作成し、炭化水素ガスを暴露することでグラフェンを成膜する手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シトシンとチミンの見極めを前倒しで行ったこと及びグラフェン基板の新しい作成方法を開発したことは大きな進展といえる。ただし、新たなコンタミの問題が表面化したのはマイナス要因と言えるが、問題が先に分かることは他年度計画の研究においては、結果としてよかったのではないか?と考えている。いずれにせよ、進めないと分からないことがあるのが普通であるので、その想定外も含めて今後も進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画の通りに進めたい。 【平成26度】第2年度 「2.前年の続き:分子指紋のデータベース化とDNA塩基-基板間相互作用の解明」 2-1 チミンとシトシンの電子状態指紋の見極め 2-2 変性(melt, 1本鎖化)したままパルス噴霧し、1本鎖に分かれた状態のまま固定すし、塩基の相補性から、ATGCを全て読める」条件を詰める。 2-3 RNAやペプチドシークエンシング:変性させたまま噴霧というプロトコルをペプチドにも適用するなど、RNAやペプチドのシークエンシングを試みる。 課題としては、コンタミの問題やノイズの問題があるが、騙しだまし行うこともできので、研究が止まらないように、並列的に対応したい。また、独自に開発したグラフェン基板を適宜用いて研究をすすめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実績の概要でも記述したが、想定外な事象として、チャンバーのリークか汚染か原因はわからないが、数日程度で、Cu(111)基板表面がコンタミに覆われてしまうことがあった。2009年度の教授退官以来、2度も装置の移転作業を行ったために、外部除振機構とベーク機構を喪失しただけでなく、機械的な衝撃でリークするようになった可能性もある 。ただし、これらに対する予算はないので、騙しだまし研究を遂行することにした。また、当初想定していたものにピエゾ素子の交換があるが、チャンバーのリーク対策やベーク対策に密接にリンクするので、様子を見ている。つまり、早まったことをすると高額なメンテ作業を繰り返すことになるので、保留したため。さらに変更点は、2年目で購入予定だったワークステーションを前倒しで購入している。逆に、1年目で購入予定のオートクレーブは逆に見送っている。 装置が購入後10年以上になるものが多く、気を付けて使用しているとはいえ、想定外の不具合が発生しないという保証はないのが現状である。特に、真空度、つまり、清浄度の悪化と、ピエゾの劣化は致命的なので、それに対応するための費用は十分に温存しておきたい。特に、リーマンショック後から世界経済が立ち直ってきたため為替レート、特にユーロが高騰し、修理費用や舶来品の備品が当初よりも高額になるので、申請当初の予算では不十分である。研究費が増額されることはないので、予算内でやりくりしないといけない。良い解決法はないが、このような不測の事態に対応できるように、使用は直ちに必要となるものに限るべきと考えている。
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Research Products
(3 results)