2013 Fiscal Year Annual Research Report
1細胞計測のためのフォトニクス・マイクロフルイーディックス融合デバイスの構築
Project/Area Number |
25286034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 博章 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20282337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 潔 筑波大学, 名誉教授 (20375405)
杉本 喜正 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主席研究員 (60415784)
尾崎 信彦 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30344873)
横川 雅俊 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50447885)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 方向性結合器干渉計 / マルチモード型干渉計 / 導波路 / 屈折率 / 細胞 / サイトカイン / 抗体 |
Research Abstract |
方向性結合器干渉計による検出では、2つの近接した導波路間での2つの固有モードの位相干渉を利用する。入射光として基底モード光を入射すると、平行導波路で2つの固有モード(偶および奇モード) の結合モードとして伝搬する。2つの固有モードは、導波路外部に染み出す近接場を介して、表面(特にギャップ内)に接する媒質の屈折率の影響を受ける。これにより、互いの干渉により出射光強度が変化する。 FDTD法による電磁界シミュレーションを利用し、導波路断面寸法、屈曲部の角度、ギャップ間隔G、結合器全長Lを決定した。この際、方向性結合器干渉計の極限的な構造として、G = 0 に相当するマルチモード型干渉計の構造検討も併せて行った 。断面寸法が縦横0.6 μm × 0.6 μmの直線導波路を基本構造としたギャップレス方向性結合器を計算モデルとして、センサ領域の周辺媒質の屈折率変化によるシグナル変化に線形性が認められた。また、抗原抗体反応を想定した分子層の屈折率変化により、シグナル変化が得られることを確認した。 シミュレーション結果をもとに、方向性結合器干渉計およびマルチモード型干渉計をSiO2 / Si基板上にネガ型フォトレジストSU-8を用いて作製した。導波路断面のSEM画像から設計通りの導波路構造の形成を確認した。波長632 nmの光学系で導波路端面への光入射実験を行ったところ、結合器全長Lを変化させたデバイスから得られたシグナルは、シミュレーション結果と良い一致を示した。 センシング素子としての評価のため、検出部に水を滴下し、その前後で得られる導波光の強度変化をCCDカメラで観察した。その結果、液滴による屈折率変化(Δn = 0.33)で光強度が変化する様子が確認された。また、測定結果とシミュレーションによる結果が一致することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、①リッジ型導波路構造で構成される方向性結合型干渉計の作製、②液滴操作用流路構造の作製と干渉計との接続を目標としていた。この種のフォトニックデバイスを試作する場合、細部の寸法を決定するためのシミュレーションが不可欠であり、研究はまずここから開始した。シミュレーションの作業は順調に進行し、試作を進める上での細部の最適寸法を決定した。なお、以下に述べるように、試作に遅れが生じたため、平成26年度以降に実施予定であった、ギャップ間隔G = 0に相当するマルチモード型干渉計のシミュレーションも平成25年度に実施した。 方向性結合器干渉計およびマルチモード型干渉計の導波路構造は、当初SiO2(n = 1.45)/ Si基板上に形成したSiN層に形成する予定であったが、学内の共用設備の導入が遅れたため、ネガ型フォトレジスト(SU-8)で導波路構造を作製した。 目標②については、目標①において最終的な構造決定には至らなかったため、流路構造の検討を25年度に開始するところまでは至らず、その前段階として、水をサンプルとして干渉計感応部に滴下し、変化を見ることにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26、27年度は、以下の項目について順次検討する。 ①サイトカインの高感度センシングの確認: 本課題では最終的に単一の免疫系細胞から産生・放出されるサイトカインの検出を行うが、まず方向性結合型干渉計あるいはマルチモード型干渉計のみを用い、サイトカインが検出できることを確認する。サイトカインが特異的に結合する抗体を干渉計のセンシング部に固定し、結合に伴う屈折率変化を方向性結合型干渉計で検出する。 ②液滴操作用流路構造の作製と干渉計との接続: このテーマは方向性結合型干渉計あるいはマルチモード型干渉計の構造が決定されないと開始することができないため、平成25年度に予定していた計画が遅れることとなった。平成25年度中に流路構造を決定するための干渉計の細部の寸法が決定されたため、これをもとに流路構造の設計、試作、および液滴をセンシング部に輸送させることが可能かどうかについてのチェックを進める。 ③単一細胞計測への応用: 免疫系単一細胞が免疫抑制剤に曝された際のサイトカインの産生の変化を調べる。Y字形流路の片方の分岐からは白血球細胞を、他方の分岐からは免疫抑制剤の入ったプラグを導入し、合流点でこれらを結合する。Y字形流路の下流部はセンシング用流路を交差するが、ここには白血球細胞よりも小さい微小貫通孔が一つだけ形成される。液滴がここにかかった状態で、貫通孔の下部に形成されたセンシング用流路にプラグを置き、減圧すると、一つの細菌が吸引口に詰まり固定される。固定された白血球細胞からはサイトカインが放出されるが、これを方向性結合型干渉計あるいはマルチモード型干渉計表面に固定された抗体に結合させ、この際の変化を検出する。ここで、サイトカインを検出することができれば、本研究の目標は達成されたことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共用設備の導入遅れに伴い、ポリマー導波路を用いた干渉計の試作を先に進めた。これにより、SiN導波路による干渉計の試作で必要とされる消耗品、共用設備使用料を平成25年度内に使用しなかったため。 次年度使用額が生じたのは試作作業の遅れが原因であり、平成25年度に使用しなかった分は平成26年度使用する。
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