2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25286036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北川 章夫 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (10214785)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フリーラジカル / 電子スピン共鳴 / 電子常磁性共鳴 / 化学センサ / 活性酸素 / 集積化 / マイクロセンサ / センサインテグレーション |
Research Abstract |
物質の劣化や状態、生物の老化に関わる各種の活性化学物質(フリーラジカル)の種類と量を測定するための方法を提案し、集積回路技術を用いてセンサデバイスとして利用できるようにすることを目的としている。検出原理は、1945年にザボイスキーにより発見された電子常磁性共鳴を用いている。この検出原理は、現在でも、フリーラジカルを検出できるほぼ唯一の分光法として広く用いられている。ただし、従来の電子常磁性共鳴の測定装置は、大型であり、測定に時間がかかるため、研究用途に限って使用されていた。本研究課題で新たに提案する測定法では、電子常磁性共鳴の計測システム全体を半導体チップの上に集積化することが可能であるため、微量サンプルに含まれるフリーラジカルを検出することができる。また、完全に電子技術のみを用いた化学分析手法であるため、使用場所を選ばず、1種類のセンサでどのような物質にも対応できるので、研究用途以外にも広く活用することができる。 新しく考案した測定回路により、従来法とは異なる測定変数を用いて、従来法と同等の電子常磁性共鳴信号のスペクトラムが得られることを理論的に証明し、特許出願した。さらに、提案法による測定回路を設計し、従来数メートルあった測定装置を、0.2ミリメートル程度のシリコンチップ上に収めることに成功した。また、測定時間を従来の数10分から1秒以内に短縮することが可能になる。試算によると、測定感度は、従来法に比較してやや低い可能性があるが、実測例がないため、測定回路を搭載した集積回路チップの試作を行った。使用した集積回路製造技術は、規格寸法180ナノメールの標準プロセス(CMOS 180nmテクノロジ)であり、殆どの半導体メーカに発注することが可能である。今後は、試作したフリーラジカルセンサの性能評価と回路方式の改良を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成25年度に、計測システムのセンサ化の方法の提案と得られる信号の解析手法を確立することを主な目標としていたが、年度中に、センサ化可能な測定法の提案と理論解析に成功し、コンピュータシミュレーションによりフリーラジカルからの信号スペクトラムの予想ができるようになった。このため、測定を行う回路の主要部分を設計し、東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(全国共同利用センター)の試作サービスを利用して、センサの試作までを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、平成25年度に試作したセンサ回路の主要部分の動作確認および性能評価を実施する。さらに、他研究室や外部研究機関でのテストができるように、測定系全体の信号処理回路を含むセンサの設計および試作を行う。 平成27年度以降には、微量サンプルの導入や選別を行う機構にセンサチップを実装し、化学分析や生物質分析に適用するための実装技術を開発する。PC等に接続してフリーラジカルを検出することができるようなデモ機の製作を行い、化学、バイオ工学分野の研究室に依頼して、測定データを集め、従来法による測定結果との比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画よりも高性能で簡潔な回路方式を考案し、回路の設計、シミュレーションが予想より早く完了したため、謝金を使用しなかった。 試作センサの評価用プリント基板の仕様を変更し、高性能化し、その製造費の一部に充てる。
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