2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁性原子3D中距離局所構造解析による室温強磁性半導体の機能発現の研究
Project/Area Number |
25286040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 好一 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20283632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 伸也 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30183601)
田中 義人 独立行政法人理化学研究所, 放射光光科学研究センター, ユニットリーダー (80260222)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛍光X線ホログラフィー / 希薄磁性半導体 / 局所構造 / スピントロニクス |
Research Abstract |
酸化物強磁性半導体における高温強磁性の発現機構は,キャリアを媒介とする交換相互作用に由来していると考えられているが,従来の理論では600 Kという高いキュリー温度は説明できない.そのような高いキュリー温度を産み出す強い交換相互作用の起源として,Coイオンとともに導入される酸素欠損の役割があると考えられている.酸素欠損により,格子が大きく歪み,隣接するTi(Co)イオンのd 軌道の間で酸素イオンを介さない直接交換相互作用が大きくなり,高いキュリー温度を実現している可能性がある.このため,Co周辺の構造情報は非常に重要である。平成25年度における研究では、ルチル型のCo :TiO2のCホログラム測定を、1%の常磁性のものと、5%の強磁性のものに対して行った。ホログラムから再生された原子像は、1%のものがルチルの構造を示し、このため、Coの濃度が低い時には単純にルチルのTiサイトに置換していることが分かる。一方で、5%の強磁性のものは、Coの周りにTi原子を多く配位しているサブオキサイドと呼ばれる特殊なクラスターを形成していることが分かった。これに対しては、X線吸収微細構造法を用い、複合的にその存在を確認した。原子像から求められたサブオキサイドの構造を基に、第一原理計算を行った。その結果、1)5%の濃度で埋め込みを行うと、サブオキサイドクラスターをルチルの結晶の中で孤立分散させることができない。2)サイキサイドクラスターは孤立状態よりも隣接している法が安定である。3)Co周辺の第一近接酸素原子に関しても、クラスターに対し、対称性の良い状態では反強磁性的になることなどが判明した。本結果は、サブオキサイドクラスターが強磁性の芽である強い証拠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験は順調に進んでいる。また、第一原理計算による結果から、新たな物理的な描像が得られたことは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
ルチル構造Co:TiO2薄膜においては、大まかに蛍光X線ホログラフィーの実験は完了したが、アナターゼ型のCo:TiO2薄膜について研究を進める必要がある。なお、Mn:ZnSnAs2の磁性研究に関しては理論的な研究も同時に進められており,MnがSnサイトに置換される場合には反強磁性,そして,Znサイトに置換される場合には強磁性になることが予測されている.ここでは,格子整合性の良いInP上にMBE法を用いて,Mn濃度を1%,5%,10%としたMn:ZnSnAs2薄膜を成長させる.蛍光X線ホログラフィーの実験では,磁性元素であるMnだけでなく,ZnやSnの蛍光X線ホログラムも測定する.試料がカルコパイライト構造を有していれば,Zn及びSn周辺の環境構造は異なる.そのために,Mn周辺の3D原子像が,Zn又はSn周辺の3D原子像と一致するか否かで,比較的,簡単にサイトを決定できる.また,図2で示したように,Asの原子層はノンドープのZnSnAs2においても非常に乱れている.この乱れが,Mnをドープした場合にどのように変化するのか(特に近接原子に対して)を調べ,どのようにして置換サイトをMn原子が選択しているのか,その決定的情報を得る.また,この情報を基に,従来論じられてきた理論計算の妥当性の検証を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、従来使用していたクライオスタットの調子が悪くなり、このため一部の機器を新しいものに更新した。一方、全システムの更新は難しく、次年度の予算と合わせて購入することを計画している。 クライオスタットによる試料冷却は、精度良いホログラムのデータを取得するためには必須の機器である。このため、従来、予定していたゴニオメーター等の機器の購入を取りやめ、試料冷却システムを新しいものに更新するために予算を投入する予定である。
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