2016 Fiscal Year Annual Research Report
液晶性を活用した薄膜作製技術による高分子有機トランジスタの高性能化
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25286045
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
坂本 謙二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (00222000)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 液晶性 / 光配向膜 / フロー・コーティング / 配向制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体の製膜プロセスにおいてデバイス基板の影響がもっとも少ない素子構造:ボトムゲート(BG)/トップコンタクト(TC)型有機電界効果トランジスタ(OFET)における素子特性のばらつき抑制の研究を、前年度から継続して行った。具体的な素子構造は、ソース・ドレイン電極(Au/MoO3)/pBTTT活性層/ゲート絶縁膜(オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)処理されたSiO2)/ゲート電極(高ドープn型Si基板)である。pBTTT活性層の製膜はフロー・コーティング法により行うが、この時、pBTTT溶液に対するゲート絶縁膜の撥液性が問題となる。全面に高密度ODTS-SAMが形成されたゲート絶縁膜表面(水の接触角:110°以上)にはpBTTT活性層は形成できない。これまで、OFETアレイ(5×12:平行素子30個、垂直素子30個)を作製する領域のODTS-SAMをストライプ状に残し、それ以外の部分を深紫外光照射によって除去して親液化することによってこの問題を経験的に解決してきた。本年度、簡略化された溶液プロファイルを仮定して表面自由エネルギー計算を実施することにより、この親・撥液パターン表面上へのフロー・コーティングのメカニズムを明らかにし、この手法をself-assisted flow-coatingと命名した。また、フロー・コーティング・プロセスを改善することにより、平行素子において平均移動度0.27cm2/Vsでばらつき(相対標準偏差)3%以下、垂直素子において平均移動度0.22cm2/Vsでばらつき3%以を達成した。これらの素子の閾値、オン電流、サブスレッショルド・スイングのばらつきも非常に小さく、30平行素子(30垂直素子)の伝達特性はほぼ同一であった。この成果は、ACS Appl. Matter. Interfacesに掲載された。また、スピンコート法で作製した極薄Azo-PI光配向膜によるpBTTT膜の高配向化の予備実験を行った。その結果、膜厚2~11nmのAzo-PI光配向膜で、pBTTTの高い配向度が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度から着手した素子特性のばらつき抑制に関する研究において、BG/TC型FETアレイの特性ばらつきの原因を明らかにし、今年度にばらつき3%以下を達成した。本成果を高インパクトファクターの雑誌に論文投稿するための再現実験、理論計算の実施に想定以上の時間を要した。また、構成部品の欠品により高配向光配向膜を作製するために購入したLB膜作製装置の納期が想定外に遅延したため、当初の計画よりやや遅れている。高配向光配向膜とフロー・コーティング法併用によるpBTTT膜の高配向化と、それによるOFET特性の向上を確かめるため本事業期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. BG/TC型OFET: これまでにフロー・コーティング法の単独利用によって平均移動度0.27cm2/Vsでばらつき(相対標準偏差)3%以下を達成した。更なる特性の向上を目指し、ゲート絶縁膜表面にナノスケールの溝構造を形成し、それを液晶性有機半導体pBTTTの配向膜として機能させる。ゲート絶縁膜/有機半導体界面のpBTTTの高配向化により高移動度化を実現する。 2. TG/BC型OFET: TG/BC型OFETの飽和領域の電界効果移動度が強いゲート電圧依存性を示す原因を究明し、理想的なFET特性を示すデバイスを実現し、pBTTTの分子配向制御による真の移動度の向上を実証する。 3. TG/BC型OFETに組み込むための、高配向Azo-PI配向膜の作製プロセスを確立する。具体的には、LB法により膜厚2~4 nmの極薄Azo-PI膜を製膜する。必要に応じて、光配向処理を製膜過程で行い、高配向(光)Azo-PI配向膜を得る。 4.高配向Azo-PI(光)配向膜を組み込んだTG/BC型OFETを作製し、その特性を評価する。
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Causes of Carryover |
H27年度から着手した素子特性のばらつき抑制に関する研究において、BG/TC型FETアレイの特性ばらつきの原因を明らかにし、今年度にばらつき3%以下を達成した。本成果を高インパクトファクターの雑誌に論文投稿するための再現実験、理論計算の実施に想定以上の時間を要した。また、構成部品の欠品により高配向光配向膜を作製するために購入したLB膜作製装置の納期が想定外に遅延したため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
LB膜作製装置の立ち上げに必要な消耗品費、および「今後の推進方策」で述べた研究を遂行するための消耗品費、国内研究発表旅費、英文論文の校閲費に使用する。
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Research Products
(11 results)