2014 Fiscal Year Annual Research Report
非熱平衡状態フォノン輸送制御による半導体光素子の新展開
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25286048
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石谷 善博 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60291481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠塚 雄三 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30144918)
矢口 裕之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50239737)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 励起子 / キャリアダイナミクス / フォノンダイナミクス / 時間分解計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実施内容は、(1)GaN薄膜の時間分解PLにおける励起子励起状態からの発光を考慮した励起子運動状態、およびこれに与えるフォノン局在の影響の解析、(2)マルチパルスレーザ励起によるフォノンの励起子ダイナミクスへの影響解析実験方法の確立、(3)フォノン過程を取り入れた励起子ダイナミクスの理論計算の3点である。これまでの研究により、励起子の励起状態すなわち主量子数n=2の状態の評価により励起子の運動状態、状態遷移過程、発光スペクトル変化の原因解明に見通しがついたため、量子井戸評価を延期して薄膜評価を続けた。 温度20Kにて時間分解PL測定を行った結果、励起密度の増加に伴うフォノン密度が増加した状態では、n=2の励起子の重心運動量はn=1のものより大きく、n=2の状態では解離状態との間の遷移によりダイナミクスが支配されていること、励起密度の違いはその空間の全エネルギー量の違いを意味し、これによりフォノン、電子・正孔、励起子のダイナミクスの各素過程の速度バランスが大きく変化することが分かった。理論計算から、低密度励起ではフォノンの吸放出による状態間遷移が支配的であり、励起密度の増加により励起部位のエネルギーは電子運動量に移行して電子衝突過程が支配的となり、n=2準位のポピュレーション比が減少することが分かった。理論計算から水素プラズマの衝突輻射モデルと同様に励起子の解離生成のバランスに関する特徴づけを行うことができると思われる。 フォノンの局在性の解析手法について、2パルスの時間差を制御した時間分解PL測定が可能となり、今後フォノン拡散(エネルギー減衰)による輻射・非輻射再結合速度変化について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した量子井戸の計測は行われなかったが、励起子主量子数2の準位を利用した励起子重心運動量と支配的状態間遷移過程の評価ができるようになったことは大きな成果である。これは、酸化亜鉛などその他の材料に対する応用も可能である。マルチパルスの光励起による時間分解計測が実施され、有益な情報が得られることが分かった。その結果の意味づけについての詳細は今後の課題である。これらの成果はH27に今後量子井戸に対して適用される。理論計算では、プラズマの衝突輻射モデルをベースにして、フォノン過程を取り入れてデバイス動作や評価測定条件に依存したダイナミクスの特徴を整理するための基礎計算が行われた。この結果、H27に、様々な材料における励起子過程の特徴を整理する基盤が整った。時間分解PLのフォノン過程を含んだ理論解析もできるようになり、不純物によるフォノン局在効果の見積りが可能になった。ヘテロ構造におけるフォノン拡散についても、計算結果が出始めた。これについては、課題も多いため、今後検討を続ける。 これらの結果、本研究目的を達成するための主要素が、一部不十分ではあるが、一部では予想以上の結果も得られ、前半2年で主な実験的理論的解析ができるようになった。 以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H27は、窒化物系量子井戸やAlGaInP系量子井戸において、前者では励起子発光を対象にフォノン局在による励起子発光過程の変化を明らかにして励起子輻射効率に対する励起密度と結晶欠陥の影響を整理し、後者では量子井戸からのキャリアオーバーフローによる電流取り出しに対するフォノン局在の影響を明らかにする。励起子ダイナミクスおよび量子井戸の電子・正孔の励起・脱励起の計算から実験結果に含まれるフォノン局在の影響を抽出して整理し、デバイス動作条件化でのダイナミクスの予測を行う。 H28はデバイス動作における特性予測手法の開発を、H27年度までの結果に基づいて行う。特にフォノン局在・非局在の制御方法の提案を行い、フォノン制御によるデバイスの設計指針についてまとめる。
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Causes of Carryover |
量子井戸評価が次年度に回ったことなどもあり、少額の消耗品支出の変更が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度予算の額は限られており、消耗品等に用いる。
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Research Products
(23 results)