2013 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による超伝導強磁性体界面での近接効果に関する研究
Project/Area Number |
25286055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80252493)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 超伝導 / 近接効果 / 強磁性 |
Research Abstract |
超高真空低温走査トンネル顕微鏡を用いて、Si(111)基板上に、表面一原子層からなる金属相であるPb誘起の表面再構成構造Striped Incommensurate(SIC)相と、超伝導相であるPb薄膜を作成し、その界面近傍における超伝導ギャップ分布をナノスケールの空間分解能で観察した。その結果、超伝導特性が界面からSIC相内へ拡がる様子が実空間で観察され、その拡がり方が界面での接触状態により大きく変化することを見出した。また、SIC上の一原子層の段差であるステップ構造により、超伝導特性の拡がりがブロックされることや、界面とステップに挟まれた領域では、無反射トンネリングにより超伝導特性が増強されることなどを観測している。その振る舞いからステップにおける電気抵抗率を初めて求めることができた一方で、コヒーレンス長より狭い領域ではこれまでの理論では説明できない振る舞いが観測されており、今後の研究課題である。 強磁性体との近接効果の実空間観察のために、室温付近でのキュリー点を持つ強磁性薄膜であるMn3Ge5をGe(111)基板上に成長させ、その後Pbを蒸着することにより界面を形成し、近接効果の観測を試みた。平坦なMn3Ge5薄膜を作成することや、原子層レベルで規定された界面を見つけることはできたものの、Mn3Ge5相への超伝導特性の染み出しを観測することはできず、それに起因した特異な超伝導特性の観測を行うことは出来なかった。しかしながら、Pb相内への超伝導破壊現象(逆近接効果)が観測され、破壊の拡がりがPbの特定の結晶方位に優先的に発生することを見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の目的である近接効果観測のための手法開発や、試料作製のためのシステム整備を順調に進めることができた。次年度予定であった強磁性体との近接効果に関しても試みることができ、必ずしも所望の結果が得られなかったが、問題点が明らかとなり、次年度以降の研究に対する重要な指針を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度に試みたMn3Ge5/Pb界面において更なる測定を行い、特に逆近接効果領域における特異な超伝導特性の探索を行う予定である。 さらに、Mn3Ge5薄膜中への近接効果が現れなかった原因として、同物質の電気伝導度が高すぎる点が挙げられることから、より電気伝導度の低い強磁性体としてクロム酸化物を系として考えており、その表面作製方法の検討、表面作製、Pb薄膜との界面の作成、界面領域における超伝導特性の観察を進め、特異な超伝導の観測を実現する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
耐用年数が過ぎて、交換を予定していた真空ポンプが現在なお稼働しており、交換の必要が無かったこと、人件費として予定していた費用が、学内措置により今年度に限り支弁を受けたことが理由である。 真空ポンプの交換を進めるとともに、人件費に関しては、学内措置分を期間延長して採用する計画であり、当初の予定よりは遅れるものの計画通りの目的に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)