2014 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による超伝導強磁性体界面での近接効果に関する研究
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25286055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80252493)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 超伝導 / 近接効果 / ラシュバ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ラシュバ分裂した表面金属層として知られるPb/Ge(111)β√3構造への近接効果を利用した超伝導特性の注入による特異な超伝導特性の観測を試みている。ラシュバ効果によるスピン分裂のため、振動的な超伝導特性の空間変調が理論的に予測されている系である。測定の結果、近接効果による超伝導特性の染み出しは17nm程度であり、スピン分裂から予測される変調周期(20nm)と同程度であり、観測可能であることが判明した。今後さらに測定精度を高めることによってスピン分裂の効果を見極める計画である。 同表面でのこれまでの測定では、近接効果に対するステップの影響が、以前に観測したPb/Si系の場合と大きくことなることが判明している。Pb/Si系では、表面金属層上でステップ構造により近接効果による超伝導の拡がりが大きく妨げられ、逆にその手前(界面側)では超伝導特性が強調される現象が見られた。しかしながら今回観測したPb/Ge系では、ステップによる影響はほとんど見られなかった。これは単純には、2つの系でのステップでの電気伝導率の違いとして説明されるが、さらに検討を要する。また表面金属層の単一ステップ構造での電気伝導の評価自体前例が無く、本研究により新規の測定方法を提案できると考えている。 また、NIMSの内橋・吉澤らとの共同研究により、In吸着Si表面での表面超伝導体において、ステップ構造がジョセフソン接合として働き、その結果、磁場下ではステップ近傍に局在したジョセフソン渦糸の観測に初めて成功した。実空間観測の利点を活かし、接合の程度により渦糸の形状が変わる様子なども捉えることにも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に進めた近接効果観測のための手法開発や、試料作製のためのシステムを用いて、今年度は、実際にさまざまな系における近接効果観察に応用し、種々の新規な知見を得ることができた。次年度予定の強磁性体との近接効果に関しても、今年度に既にいくつかの系で試みており、今後の研究に対する重要な指針を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Mn3Ge5、クロム酸化物などの強磁性体材料やPb/Geなどの表面ラシュバ系での近接効果による超伝導特性注入を利用した新奇超伝導特性の実空間観察を推進する。また当初の計画では、こうした系における磁場下での特性や渦糸構造に関してはあまり着目していないが、これまでの研究を通じて、興味深い振る舞いも観察されていることから、次年度は、磁場をパラメータとした実験にも注力する計画である。
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Causes of Carryover |
学内での年度内限りの研究費から、物品購入がある程度可能となったことから、その分の残金を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究遂行により、装置・測定系の整備が済んだことから、次年度は、実際の測定が中心となる。効率良く測定および解析を進めるために研究補助を依頼する予定であり、そのための人件費として支弁する計画である。
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Research Products
(10 results)