2014 Fiscal Year Annual Research Report
In-situ波動場再構成TEM法による化学反応の可視化
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25286059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高井 義造 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30236179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 吉秀 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70221215)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 波動場再構成法 / その場観察 / 触媒反応 / 実時間焦点位置変調法 / 球面収差補正 / 原子レベル直視観察 / グラフェン生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
透過電子顕微鏡を用いたその場観察技術(in-situ observation)は、今や、様々な化学反応を原子1個1個の結合や解離という物理現象に置き換えて理解することを可能にしつつある。我々は遷移金属触媒粒子によるグラフェン生成のその場電子顕微鏡観察に成功しているが、長年に渡って培ってきた球面収差補正技術の1つである波動場再構成技術(実時間焦点位置変調電子顕微鏡法)を適用すれば、グラフェン生成に係わる化学反応を原子1個1個単位で可視化できる可能性がある。しかしながら現状において、波動場再構成技術はありのままの原子構造を直視できる状態に近づきつつあるものの、ダイナミックに起こる現象を原子レベルで正確に可視化することにはどの研究機関も成功していない状況にある。最大の原因は、観察中に試料位置が変化することに起因している。特にZ方向への試料移動は原子レベルでの正確な可視化にとって致命的な障害となっている。 本研究では、安定的に触媒化学反応を起こさせるために、(1)触媒反応の精密な温度コントロールを実現する。さらに、高感度・高速CCDカメラシステムを実時間焦点位置変調電子顕微鏡システムに搭載することで、(2) 高速度・高忠実度波動場再構成法を完成させる。また、実時間焦点位置変調電子顕微鏡法の最大の特徴である、フォーカス系列・時系列の2次元連続画像を記録しているという点を利用し、(3)動的変化を3次元的に追尾可能な波動場再構成法として完成させる。さらに、動的追尾する機能を最大限に利用して、(4)原子1個単位の挙動を正確に捉えて触媒化学反応の直視観察を実現する。その際、(5)軽元素(炭素)と重元素(触媒金属)を区別して動的観察できる波動場再構成を実現し、グラフェンを生成しているアトミックサイトを同定してグラフェン生成メカニズムを原子レベルで明らかにする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25-26年度において、安定的に触媒化学反応を起こさせて原子レベル観察を実現するために、その場観察用加熱ホルダーに改良を加えて昇温パワーの低減を図り、高温時における試料の安定性を確保することで、In-situ波動場再構成TEM法による化学反応の可視化のための最重要技術課題を大幅に改善した。また、高感度・高速CCDカメラシステムを焦点位置変調電子顕微鏡システムに搭載することで、高感度で高速・高忠実度の波動場再構成が実現できるシステムを完成させた。特に、開発したシステムでは今後の拡張性を確保するために、すべてのハードウエアとソフトウエアを自作し、制御系ソフトウエアはLaboVIEWを用いたグラフィカル言語で仕上げた。その結果、256x256画素の1/60秒での実時間球面収差補正振幅・位相分離観察が行えることを実証した(論文執筆中)。同時に、3次元フィルタリング処理による波動場再構成システムも実行できるように拡張し、S/N比の高い球面収差補正位相像が2秒以内の演算時間で出力できることを実証した(論文執筆中)。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、動的変化を追尾できる波動場再構成システムを完成させる。我々が開発してきた実時間焦点位置変調電子顕微鏡では、フォーカス系列、時系列の連続画像を高速に記録しているため、たとえX, Y, Z方向に対して試料ドリフトが発生しても、3次元的に原子位置を追尾する機能を付与することが可能である。方式としてはソフトウエア方式とハードウエア方式を考えているが、ソフトウエア方式ではすでに追尾をするための計算処理プログラムを搭載したシステム化を開始しており、1/30秒の時間分解能で正確に追尾できることを予備検証している(特許申請後に論文執筆を予定)。この機能を最大限に利用してグラフェン生成過程の球面収差補正観察を実施すれば、ボケのない映像でグラフェン生成過程をとらえて原子1個単位で触媒化学反応の直視観察が実現できるであろう。(現在、その実証実験を進行中)。その際、軽元素(炭素)と重元素(触媒金属)の違いによる位相変化量を敏感にとらえることができる新しい動的波動場再構成アルゴリズムを考案しており(特許申請を検討中、論文執筆予定)、近い将来において触媒金属のどのアトミックサイトでグラフェンが生成されているかが明らかになるであろう。
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Causes of Carryover |
電子顕微鏡の調整に必要な経費、並びに物品購入に必要な経費を見込んで、基金を次年度に繰り越す計画を立てた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、電子顕微鏡の修理・調整のための経費、並びに変調電子顕微鏡システムの改良のための物品購入に使用する。
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