2014 Fiscal Year Annual Research Report
高次非線形ラマン散乱顕微鏡による結晶化モニタリング
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25286070
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 守 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (70237949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
新岡 宏彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70552074)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形光学 / ラマン分光 / 光学顕微鏡 / 結晶化 / 対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
試料での励起光の偏光を制御するシステムを構築した.4次コヒーレントラマン散乱は,非中心対称性物質にのみ生じるため,非常に偏光に敏感である.したがって,その信号強度は偏光に敏感である.開発した装置は,市販の顕微鏡をベースとした観測システムを構築しているため内部ミラーの反射により,顕微鏡光入射光の偏光(直線偏光の向き)を制御しても,試料への入射時にはその偏光状態が変化してしまっていた.そこで,対物レンズ直前に回転色消し半波長板を設置し,高い偏光の純度(100:1以上)を達成した. 4次コヒーレントラマンスペクトル強度の較正法を確立した.広帯域光にスーパーコンティニュウム光を用いているが,スーパーコンティニュウム光は構造をもっているために,正確な4次コヒーレントラマンスペクトルを得る為には,強度較正が必要である.しかしながら,直接スーパーコンティニュウム光のスペクトルを用いることは難しい.これは,4次コヒーレントラマンスペクトルの分解能は,分光器よりもむしろ狭帯域光のスペクトルに依存すること,また狭帯域光とスーパーコンティニュウム光の時間的重なりに4次コヒーレントラマンスペクトル強度が依存するためである.そこで,狭帯域光とスーパーコンティニュウム光の和周波光を用いた強度較正法を確立した. 水和DAST結晶と無水DAST結晶を用いて,構成分子はほぼ等しいにも関わらず,CARS と4次コヒーレントラマンで信号がどのように変化するか検証した.両結晶でCARSは観測されるものの,同じ位置で4次コヒーレントラマンは無水DAST結晶でのみ観測され,対称性による観測結果の違いを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
偏光の正確な制御,スーパーコンティニュウム光のスペクトル構造による影響の強度較正法の確立など,基礎的観測環境の整備を行うことができ,結晶の対称性を4次コヒーレントラマンで検出可能であることを示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
4次コヒーレントラマン散乱は,試料の対称性に敏感な観測手法である.そこで,対称性の異なる微結晶が混在した試料を作成,実際に対称性が異なることによってその信号が変化し,結晶の対称性によるマッピングを行うことが可能となる. 観測の高速化を,ヘテロダイン検出によって実現する.4次コヒーレントラマン散乱は,ストークスラマン散乱と,アンチストークスハイパーラマン散乱過程が合わさった現象である.波長の異なる2色のレーザー光(角周波数をω1, ω2とする)を用いた場合,4次コヒーレントラマン散乱は,(ω1 - ω2) + 2ω1 = 3ω1 - ω2,または (ω1 - ω2) + 2ω2 = ω1 + ω2 に現れる.前者がこれまで用いてきたホモダイン検出コヒーレント4次コヒーレントラマン散乱であり,後者がヘテロダイン検出コヒーレント4次コヒーレントラマン散乱である.後者には,和周波発生が重畳するため,これらの干渉として信号が得られる.この際,和周波光が局部発信器となり,和周波光と4次コヒーレントラマン光の積が信号として現れる.このため,4次コヒーレントラマン光が増強されて検出される.このため,観測時間の短縮が期待できる.本原理による気―液界面研究が行われてきたが,イメージングは未だ行われていない.そこで,ヘテロダイン検出4次コヒーレントラマン散乱イメージングの確立を行う.
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Causes of Carryover |
国際学会へ出張予定であったが,結果が出るのがやや遅れ国際学会へ出席を取りやめた.また,研究補助員を雇用する予定であったが,望ましい人が見つからず断念した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
広帯域光にスーパーコンティナム光を用いているが,この波長帯域が広いためチャープが生じる.特にヘテロダイン検出するためには,このチャープによる影響を補正する必要がある.特に計画しているヘテロダイン計測では,短波長側のスーパーコンティナム光を用いる必要があり,このチャープ補正光学系を購入することでこれを解決する.
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Research Products
(5 results)