2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25286083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
有吉 誠一郎 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20391849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ベイ ジョンソク 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20165525)
中島 健介 山形大学, 理工学研究科, 教授 (70198084)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ/赤外材料・素子 / 超伝導材料・素子 / 超精密計測 / 電波天文学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、宇宙赤外線背景放射(CIRB、サーブ)の全天観測という新たな研究領域を切り拓くべく、超高感度・広帯域・大規模アレイ性能を兼ね備えたテラヘルツ波検出器(レシーバー)を創成することにある。具体的には、従来の金属系超伝導材料に比べて高い転移温度(Tc)をもつ窒化物系超伝導材料を導入することで新たな力学インダクタンス検出器(MKID)アレイを開発し、1000画素クラス同時読出し回路を構築して冷却から計測制御に至る全自動化の達成を目指している。 1年目はMKID構成要素の最適化(設計と材料開発)を重点的に進めた。具体的な研究項目は以下の2点である。 (1) 高感度・広帯域MKIDの設計最適化 高感度・広帯域・省スペース化という3つの問題を同時に克服するために、3次元電磁界ソフト(Ansoft社HFSS)を用いてスパイラル型MKIDの設計解析を行った。また、次項で試作したNbN製MKIDのマイクロ波共振特性を評価した結果、温度3KでQ値~2万という良好な共振特性を確認した。今後の設計へのフィードバックにより、広帯域放射が示唆されるCIRB観測に適した最適化設計を進める予定である。 (2) 新規MKID用材料の開発 山形大学が所有するDCマグネトロンスパッタ装置を用い、2種の窒化物系超伝導材料(NbN、TaN)を主軸として材料開発を進めた。まず、NbN膜に関しては基板種やスパッタ時に流れる電流のコントロールにより組成比を精密に制御した。一方、TaN膜に関してはTaとNが1対1の組成比と薄膜の均質性を併せもつ成膜条件を見出した。なお、これら2種の薄膜サンプルについては4He冷凍機に設置・冷却し、Tcの測定を行った。その結果、NbN膜ではサファイア基板上で16K以上(150nm厚)、TaN膜ではMgO基板上で8.7K(約100nm厚)という、バルクのTcに匹敵する高品質薄膜を実現した。現在、既有のフォトマスクを用いたMKIDの試作を進めており、2年目以降に行うMKIDの本作製と性能評価に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目終了時にはMKID1画素の設計解析と試作版の冷却評価によって良好なマイクロ波共振特性を確認し、かつ、NbNおよびTaN膜の成膜条件最適化によって高品質薄膜の形成を可能にしており、2年目以降に行うMKIDの本作製と性能評価の準備が整っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は1画素の本作製と性能評価、アレイ設計と試作を行う予定である。 まず、設計に関しては、前年度までに得られた1画素設計の知見をもとに、今後はアレイ設計に重点を置いた研究を進める。具体的には、アレイ化の際の画素間クロストークを防ぐために、検出器アレイ間隔の電磁界解析を行う。この解析には、3次元の電磁界解析ソフト(Ansoft社HFSS)や2次元の電磁界解析ソフト(Agilent社ADS)を用いることで最適化設計を目指す。 次に、作製に関しては、超伝導薄膜の加工条件を確立させてMKIDの本作製に取り掛かる。具体的には、異なるマイクロ波共振線路長をもつMKIDを1枚のフォトマスク上に並べて設計・配置し、山形大の超伝導素子作製用プロセスライン(露光・現像装置、エッチング装置等)を用いて行う。また、単層膜というシンプル構造をもつMKIDの高い作製歩留まりを活かし、一足先にアレイ試作へ移行する。 最後に、MKIDの冷却とマイクロ波共振特性の評価に関しては、低振動型3Heパルスチューブ冷凍機(最低到達温度 0.3K)を用い、0.3Kステージに温調を掛けることで任意の温度で使用する。この冷凍機システムは冷媒(液体ヘリウム)フリーかつスタートボタンを一度押すだけで全自動冷却が可能であり、タイムロスの少ない効率的な冷却評価が可能である。また、テラヘルツ帯フーリエ変換分光器を用いて、MKIDの光学特性(検出感度、周波数スペクトル等)を測定することで検出器性能を明らかにし、MKIDの設計から作製・性能評価に至る一連の過程を繰り返して検出素子の最適化を図る。また、同時並行して、PC制御の読出し回路を設計・構築する。これと上記の無冷媒0.3K冷凍機システムを組み合わせることで、冷却から計測に至る全自動化の達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3次元電磁界解析ソフト(Ansoft社HFSS)のライセンス契約時、および作製と評価に必要な消耗品(基板・ターゲット材料、高周波回路部品など)購入時の交渉により、可能な限りのコスト削減を実施したため。 MKID用超伝導材料(NbTiNなど)の新規開拓を目的として、小型スパッタ装置の購入費用に充当する予定である。なお、NbTiNは超伝導特性に極めて優れた材料であり、他の窒化物超伝導体に比べてもさらに高いテラヘルツ光検出性能が期待される。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] NbN-based Microwave Kinetic Inductance Detector with a Rewind Spiral Resonator for Broadband Terahertz Detection2013
Author(s)
S. Ariyoshi, K. Nakajima, A. Saito, T. Taino, H. Tanoue, K. Koga, N. Furukawa, H. Yamada, S. Ohshima, C. Otani, and J. Bae
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Journal Title
Applied Physics Express
Volume: 6
Pages: 064103_1-3
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Microwave property and optical response of MKIDs using NbN symmetrical spiral resonator array2013
Author(s)
A. Saito, K. Hayashi, K. Nakajima, S. Ariyoshi, Y. Ogawa, H. Yamada, T. Taino, H. Tanoue, C. Otani, J. Bae, and S. Ohshima
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Journal Title
Proceedings of 38th International Conference on Infrared, Terahertz and Millimeter Waves (IRMMW-THz2013)
Volume: -
Pages: Th P3-18
DOI
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[Presentation] Terahertz Response of a Microwave Kinetic Inductance Detector with an NbN Spiral Resonator2013
Author(s)
S. Ariyoshi, K. Nakajima, A. Saito, T. Taino, H. Tanoue, K. Hayashi, H. Yamada, S. Ohshima, C. Otani, and J. Bae
Organizer
11th European Conference on Applied Superconductivity (EUCAS2013)
Place of Presentation
Genova, Italy
Year and Date
20130915-20130918