2013 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴軟X線コヒーレント回折法が拓く新しいドメイン構造物性研究
Project/Area Number |
25286090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
中尾 裕則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (70321536)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コヒーレント回折 / 共鳴X線散乱 / ドメイン / 外場応答 / 構造物性 |
Research Abstract |
本研究課題では、強相関電子系の巨大応答現象の背後に存在すると期待されている相分離・2相共存といったドメインの応答状態を、共鳴軟X線コヒーレント回折法により観測する手法の確立を目指す。さらに、確立された手法を適用し、マンガン酸化物系の巨大磁気抵抗効果などの巨大応答機構を微視的に解明することを目指している。H25年度は、軟 X 線ビームラインでのコヒーレント X 線切り出しを行うための、超小型4象限スリットの製作を行った。特に、試料近傍に設置するためのスリットの小型化を目指して、スリット内部の機構の改良を行った結果、当初より30%程度小型化することに成功した。今後のコヒーレントX線切り出し実験で威力を発揮することが期待される。一方、遷移金属酸化物における共鳴軟X線散乱実験を進め、Co酸化物では、単に共鳴磁気散乱を観測しただけでなく、観測されたエネルギースペクトルから、磁気構造を担っているコバルトの価数、スピン状態を決定することに成功した。さらに、クラスター計算を行うことで、スピンと軌道磁気モーメントの大きさの評価にも成功した。結果、共鳴散乱のエネルギースペクトルの理論的な解釈が進み、今後の磁気ドメイン観測につながるものと期待できる。また、人工超格子にすることで初めて出現する巨大磁気抵抗効果が報告されている(LaMnO3)m(SrMnO3)mでの共鳴散乱実験を行い、中性子磁気散乱が難しい薄膜での磁気構造の決定にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、本研究経費で開発する超小型4象限スリットを利用したコヒーレントX線の切り出しを行い、既存の共鳴軟X線回折装置群を利用したコヒーレントX線実験を実施する。特に、真空槽内の試料近傍に精度の高い4象限スリットを製作・設置することで、フレネル領域のコヒーレント光を切り出すことを目指した。また、4象限スリットを試料近傍に近づけると試料側の冷凍機の構造体との干渉問題もあり、可能な限り小型の4象限スリットを製作することで、各回折装置内で駆動軸の可動範囲の制限が緩和し、試料ごとに異なる測定Q領域での実験の自由度の確保が必要となっている。このような背景のもと、可能な限り小型の4象限スリットの製作に重点をおいた。まず、複数業者と設計のやり取りし小型化に適した業者を選定するとともに、スリット内部の機構の改良を重ねた。結果、当初より30%程度小型化した4象限スリットの製作が可能となり、今後より自由度の高いコヒーレントX線回折実験が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の共鳴軟X線回折計を利用してコヒーレントX線回折実験を実施するために、超小型の4象限スリットを昨年度開発・製作した。しかしながら、予算的な制約のために、4象限スリット用の可動ステージの製作は見合わせた。今年度は、完成したスリットを利用してコヒーレントX線切り出し方法を評価や実験を進める。具体的には、確立させたコヒーレントX線回折の手法を具体的な系に適用し、人工超格子にすることで初めて出現する巨大磁気抵抗効果が見つかって注目を集めている(LaMnO3)m(SrMnO3)mでの共鳴軟X線散乱実験を進める。特に低温相では磁気リラクサー状態が期待されており、磁気的ドメイン状態が観測されるだけでなく、伝導性に関わっている電子状態にも注目した実験を推進する。また、これらの実験を通じて利用形態を決定し、年度末に向けて簡易的なスリット位置調整機構を製作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既存の共鳴軟X線回折計を利用してコヒーレントX線回折実験を実施するために、超小型の4象限スリットを昨年度開発・製作した。しかしながら、予算的な制約のために、4象限スリット用の可動ステージの製作をそのまま実施することはできなかった。そこで、作成した4象限スリットを利用した実験を仮装置として実施し、利用形態を決定したうえで、簡易の位置調整機構を製作することとした。また、位置調整機構に必要となる金額をねん出するため、昨年度は可能な限り出費を抑えた。 今年度は、製作した4象限スリットを利用してコヒーレントX線切り出し方法を評価や実験を進める。この評価実験を通じて利用形態を決定した上で、年度末に向けて簡易的なスリット位置調整機構を製作する。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Spin State of Co3+ in LaCo1-xRhxO3 Investigated by Structural Phenomena2013
Author(s)
Shinichiro Asai, Ryuji Okazaki, Ichiro Terasaki, Yukio Yasui, Wataru Kobayashi, Akiko Nakao, Kensuke Kobayashi, Reiji Kumai, Hironori Nakao, Youichi Murakami, Naoki Igawa, Akinori Hoshikawa, Toru Ishigaki, Outi Parkkima, Maarit Karppinen, and Hisao Yamauchi
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 82
Pages: 114606:1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Self-absorption correction study for L-edge of 3d transition metals2013
Author(s)
T. Sudayama, Y. Takahashi, J. Okamoto, Y. Yamasaki, H. Nakao, Y. Murakami, S. Asai, N. Furuta, R. Okazaki, Y. Yasui, I. Terasaki
Organizer
Light and Particle Beams in Materials Science (LPBMS) 2013
Place of Presentation
Tsukuba, Japan
Year and Date
20130829-20130831
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