2014 Fiscal Year Annual Research Report
多重ゼータ関数、多重保型L関数の代数的および解析的挙動の研究
| Project/Area Number |
25287002
|
|---|
| Research Institution | Nagoya University |
|---|
Principal Investigator |
松本 耕二 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60192754)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 靖 立教大学, 理学部, 准教授 (80343200)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 多重ゼータ関数 / 双曲線関数 / 超平面配置 / 特殊値 / 混合型普遍性 / 零点集合 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
今年度に得られた成果としては、まず第一に、我々が導入して研究して来た主要な対象のひとつであるルート系のゼータ関数を、さらに一般化した、超平面配置に付随するある種の格子上の無限和について考察し、特にその特殊値の明示公式を与えたことが挙げられる。この和は収束性が非常に微妙で、かなりデリケートな議論を必要とする。しかし、ルート系のゼータ関数の特殊値表示を Poincare 多項式と結びつける仕事の準備としての意義もあり、次年度以降の研究にも繋がる重要な進展だった、と捉えている。Poincare 多項式との関連についてはまだ論文は出来上がっていないが、既に結果はかなりまとまったものが得られており、立教大学で開かれた、概均質ベクトル空間をテーマとする日仏研究集会で公表した。また、双曲線関数を含む無限和についても、リトアニアで開かれた確率統計の国際学会で講演し、その報告集にはそれまでの結果の要約のみならず、新しいヴァージョンの明示公式まで記述することができた。数値実験の方向では、二重ゼータ関数の zero-divisor について、変数を一致させた時に現われる零点の多くが、単一の zero-divisor 上に乗っていると思わせる実験結果を得た。これは多変数関数としての多重ゼータ関数の挙動に対する全く新しい見地を提供する。最後に、普遍性理論の方向でも進展があった。見正、Sandar と Steuding によって切り開かれた混合型同時普遍性は、従来いろいろな特殊な状況で個別に示されていたが、今回、Euler 積を持ち平均値の良い評価を持つ、かなり一般のゼータ関数と、Euler 積を持たない周期的 Hurwitz ゼータ関数との間に、一般に混合型の同時普遍性が成り立つことを証明した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果は、かなり順調であったことは間違いなく、ある意味では想定以上に進展があった部分もある。しかし大局的に言えば、今年度の成果は次年度へと繋がる準備としての色彩が強い。超平面配置の結果はルート系のゼータ関数と Poincare 多項式との関連性を論じるための準備としての意味があるし、数値実験も理論的考察へ向けての前段階だし、混合型普遍性も、究極的には離散型の場合の考察が目標で、それへ向けての第一段階、という意味合いが強い。そういう状況なので、本研究課題における大きな目標からすると「準備的な諸結果を順調に得た」という風に総括できると思う。その意味では想定内の進展であるので、区分（２）を選んだ。
|
| Strategy for Future Research Activity |
これは上述したことにまさにそのまま繋がるのであるが、第一にはルート系のゼータ関数と Poincare 多項式との関連であり、これはある程度は既に完成しているが、なお研究が必要である。この作業を今後のひとつの中心的な課題としたい。また、離散型普遍性定理の研究も、上述した通り、今後の大きな目標のひとつである。しかし一方で、しばらく中断した形になっていた、保型多重L関数の研究においても、保型形式の周期と関連づける着想が得られているし、ルート系のゼータ関数の分割数理論への応用にも手がつき始めている。こうした方向をも考察することで、より広い見地からの研究課題の追求ができると考えている。
|
| Causes of Carryover |
わずかな次年度使用額が生じているのは単なる残金であり、この残金で賄える消耗品等については今年度は既に十分だったので、次年度に回す方が有効利用できると判断した。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、消耗品費の一部として使用。
|
Research Products
(10 results)
