2016 Fiscal Year Research-status Report
ゴレンシュタイン空間上で展開される導来ストリングトポロジーの研究
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25287008
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
栗林 勝彦 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40249751)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストリングトポロジー / Batalin--Vilkovisky代数 / ループ空間 / スペクトル系列 / Gorenstein空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
1988年Y. Felix, S. Halperin, J.-C. Thomasにより導入されたGorenstein空間は向き付けられた多様体,Lie群の分類空間やさらに一般に,Borel構成を含む大きなクラスをつくる。本研究では2000年代始めにY. FelixとJ.-C. Thomasによりその枠組みが構築された単連結Gorenstein空間上の導来ストリングトポロジーの研究を推進する。より具体的にはGorenstein空間の例となる空間を新たに構成するとともに,それら空間上のストリング作用素の具体的計算を押し進めることを目標としている。特に研究期間の後半では,D. ChataurとL. MenichiによるLie群の分類空間上のコホモロジー的共形場理論(HCFT)をコホモロジーに付随する「次数」に配慮し厳密に計算出来る枠組みを整備することを目的としている。27年度に続き,28年度もこの次数にこだわり分類空間のストリングトポロジーの研究をすすめた。27年度までに,Eilenberg-Mooreスペクトル系列上にストリング作用素を導入しストリング作用素の計算手法を研究協力者と共に確立した。正次数を持つGorenstein空間に対して,このスペクトル系列は上手く機能するが,しかし負次数を持つGorenstein空間に適用する場合,系列の各項で全ての作用素が自明になってしまう。特に,連結Lie群の分類空間のコホモロジー上定義されるBatalin-Vilkovisky(B-V)代数構造をスペクトル系列利用以外の手法で計算する術を考察する必要がある。27年度後半から28年度においては分類空間のストリングトポロジーに新しい計算手法を導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の計算手法では研究代表者が自由ループ空間の研究で用いてきた加群微分子を応用している。ストリング作用素をカップ積の言葉に翻訳するという考え方が基になり実際の具体的計算が実行できることになる。研究の結果,アンジェ大のLuc Menichi氏と下記1), 2), 3)の結果を含む論文を執筆し,学術雑誌に投稿した。 1) 連結Lie群Gの分類空間BGの体K係数コホモロジーが多項式環である場合,ループホモロジーH*(LBG; K)のループ積は自明になってしまうこと,ループ余積は単射であり,したがって十分に非自明である。2) Lie群の整数係数ホモロジー群がねじれ部分を待たない場合, コホモロジーH(LBG; K)の双対ループ余積から定義されるBatalin--Vilkovisky(B-V)代数構造をそのモデルケースで明らかにした。これにより,HCFTから一般に次数付きBatalin-Vilkovisky(B-V)代数構造が誘導される。3) SU(n)及びランク2の単連結コンパクト単純例外Lieの分類空間のコホモロジー上定義されるB-V代数構造を完全に決定した。いずれもこれ迄に行なわれていない具体的な計算であり,その計算手法も結果も新しいものである。また本研究遂行のために研究集会「空間の代数的・幾何的モデルとその周辺」を連携研究者, 研究協力者と共に開催し研究に関連する情報収集に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度にあたるため,本事業のまとめと今後の発展をにらみながら導来ストリングトポロジーの研究を進める予定である。28年度に単連結空間Xのコチェイン複体とXの基点付きループ空間のチェイン複体の導来圏の間の双対性に関する結果を論文として出版した。この結果により,Blumberg, Cohen, Telemanのストリング圏に関する結果を多様体のレベルから単連結空間に一般化できる可能性がある。さらにネーター的Hopf空間のストリング作用素の(非)自明性の問題やGorenstein空間のストリングトポロジーに現れる「定数問題」を厳密に考察し, ループホモロジーが位相的場の理論になる条件を明確に記述する研究を, Luc Menichi氏, 内藤貴仁氏と共に行ない,共著論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に関連する研究集会の開催が当初の計画より安価で遂行できた。29年度に開催予定のセミナー開催費として次年度に予算を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自身の国内外出張旅費および本研究に関連して企画開催する信州トポロジーセミナー,勉強会,研究集会の講師旅費等に使用する。特に平成29年11月香川で開催の「ホモトピー論シンポジウム」と企画研究集会として信州大学で平成29年9月に開催する「空間の代数的・幾何的モデルとその周辺」の講師旅費としての使用を計画に入れている。
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Research Products
(4 results)