2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様体上の逆散乱理論の新局面-格子からオービフォールドまで
Project/Area Number |
25287016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯崎 洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90111913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 昌宏 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (50182647)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 逆問題 / スペクトル理論 / S行列 / ディリクレーノイマン写像 / リーマン多様体 / オービフォールド / 格子 |
Research Abstract |
格子(離散的多様体)からオービフォールド(特異点を持つリーマン多様体)までを視野においた様々な空間上で定義された連続スペクトルを持つラプラシアンに対してスペクトル・逆散乱理論を構築するのが目的である。特に(1)錐状特異点を持つ漸近的双曲多様体上の逆散乱理論、(2)無限遠においてリーマン計量が指数的増大と指数的減少の中間的挙動を持つ多様体のスペクトル・逆散乱問題、(3)非コンパクト多様体上の微分形式に関する逆散乱問題、(4)離散的シュレーディンガー作用素に対する逆散乱問題、の4つの課題を研究している。(1)に関しては漸近的に双曲的な2次元以上のオービフォールドに関して一般のエンドに対応するS行列の成分から多様体全体を再構成する理論を完成した。エンドは体積無限大のレギュラーなものも体積有限のカスプの場合も共に許容される。重要な例として3次元双曲空間にクライン群が作用してできる数論的多様体を扱うことが出来る。この結果をさらに一般の錘状特異点をもつ多様体に拡張することが次の目標である。(2)に関しては各エンドが持つべきリーマン計量の自然な条件を考察し、スペクトル順問題解決の見通しを得た。(3)に関しては理論の基礎を構築するための基本補題、評価式等を多数準備した。(4)に関しては六角格子、カゴメ格子、ダイヤモンド格子、グラフェン等、物理的に重要な多くの格子を統一的に扱い得る摂動された格子モデルを導入し、その上のスペクトル理論を展開することができた。特にレリッヒ型の定理、放射条件、スペクトル表示、ヘルムホルツ型方程式の解空間等、連続モデルに対する理論の類似が格子に対しても成立することを示した。これにより今後の逆問題への基本的段階が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)に関しては論文を投稿できた。一般の錘状特異点に関してはその定義が重要であり、現在、共同研究者たちと協議している。よい定義が得られれば理論の完成は近い。(4)に関してはスペクトル理論の順問題の部分の草稿を執筆中であり、今年度中に投稿できるであろう。逆問題に関しては今年度中に見通しをつけたい。(2)に関しては順問題の部分の見通しが立った。これは理論の半分を把握したことを意味する。(3)は基礎段階にあり、はっきりした展望を得ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)に関しては一般の錘状特異点の定義を確定することが最も重要な課題である。これは(2)の逆問題の部分とも関連しており、今年度中に結論を得たい。(2)は順問題の部分の細部を検討し確認する。(4)は逆問題の部分の輪郭を確定させたい。(3)については基礎的な事実に不確かなところがあったため、マックスウエル方程式に限定して、非コンパクト領域での幾何学的量と微分形式の関係について再考する。
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Research Products
(6 results)