2016 Fiscal Year Annual Research Report
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25287017
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
大島 利雄 城西大学, 理学部, 教授 (50011721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 秀隆 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (50323465)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 常微分方程式 / 超幾何系 / 数式処理 / ルート系 |
Outline of Annual Research Achievements |
リジッドなFuchs型常微分方程式の可約条件を組み合わせ論的に容易に求めるアルゴリズムを得ており,さらにそれらと自然に対応している多変数超幾何微分方程式についても,モノドロミー群の既約性条件を得ることができ,さらに可約となるときの分解の仕方の記述や,分解が見かけの特異点を持たない商方程式の解で与えられる条件も分かった. 2変数の超幾何関数に対応するKZ型の超幾何微分方程式に対して,middle convolutionと対称性による方程式のリーマン・スキームの変換が計算可能なことを昨年度末に得ていたが,それを計算する数式処理Risa/Asirのプログラムを作成し,多くの新しい計算結果を得た.多変数拡張とこれらの変換とさらに1変数への制限により,リジッドなスペクトル型に留まらないより広い変換を構成し,いくつかの興味深い具体例を得た.逆に,多変数化の研究からアイデアを得て,リジッドな方程式の半局所モノドロミー,すなわち複数の特異点を一回まわるモノドロミーの計算方法を得た.これにより,リジッドで分岐のない不確定特異点型の方程式の不確定での局所モノドロミーが具体的に容易に計算できるようになった. 物理学者から数学者に提起されたq-超幾何級数の収束について,初等的な解答を得て論文にまとめた. 今後の研究に役立てることを目的として,数式処理 Risa/Asir の関連するプログラムを開発を進め,特に視覚的にも綺麗に結果を出力する関数を作成して公開した.数式処理での計算結果や途中計算を文書化するため,数式表現に優れたTeXでの出力もサポートしている.そのため,作成したプログラムは高校や大学での数学教育にも役立ち,利用者が増えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多変数の超幾何関数についても,Fuchs型の常微分方程式について研究代表者が得ていた様々な観点が有効に応用できることがより明らかになった.特に既約性についての決定的な結果を得て論文にまとめた.またKZ型の多変数の超幾何のリーマン・スキームがmiddle convolutionでどのように変換されるかは未解決であったが,2変数の場合に解決し,より多くの変数に対する一般的記述への糸口を得た.
多変数化によって,数学的には見やすくなったが計算が複雑になるため,微分方程式の解析のための数式処理のプログラムを使いやすくした.
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Strategy for Future Research Activity |
より一般多変数の超幾何系についても研究を進め,さらに数式処理のプログラムを拡張し,middle convolutionなどの様々な変換について多変数が扱えるようにする. 研究代表者の独自の観点からの解析を,リジッドな常微分方程式と直接結びつかない多変数の超幾何系も含めて扱う.さらに曲線への制限を通じて,重要ではあるがリジッドでない常微分方程式の研究にも役立たせる.さらに,余次元2の特異点の近くでの解析,および余次元1以上の特異点への制限に注目し,解の様々な解析的性質を明らかにする.
不確定特異点を含むリーマン球面上の線型常微分方程式の大域的な一般的扱いを進展させ,シンプレクティックベクトル空間内の平面曲線との対応をつけ,それらのリーマン・スキームを通じてのスペクトル型による分類と後者のシンプレクティック双有理変換による解析によって両者の構造を明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
年度末の国内出張や,次年度にまたがる海外出張など,次年度に清算される経費があった.また,研究代表者は,今年度は研究が新たに進展したため,それを進めてまとめる方向に重点を移し,海外における国際的な集会での発表は次年度行うことにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,本研究の最終年度であるため,得られた研究成果をまとめると共に,代表者自らが国内外の関連する研究集会の主催やそれらに参加して研究成果の発表を行う.それによって,本研究がきっかけとなって明らかになってきた新たな研究方向を示し,成果が期待できる次の研究すべきテーマを具体的に示す.
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