2015 Fiscal Year Annual Research Report
複素エノン写像の力学系:相空間からパラメータ空間へ
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25287020
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 豊 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20304727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅岡 正幸 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314832)
荒井 迅 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362432)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘノン写像 / ホースシュー領域 / 複素力学系 / 精度保証計算 / 変分原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度中に実施した研究の中で主に進展があったのは、ヘノン写像に対する複素力学系的手法を実ヘノン力学系の不変測度の研究に応用する課題である。昨年度の段階で、北海道大学の荒井迅氏との共同研究から、実ヘノン写像のパラメータ空間におけるホースシュー領域の境界が b-軸から a-軸への実解析的な関数のグラフに一致することがわかっていた。またさらに、ホースシュー領域が連結かつ単連結になることもこの事実から従った。今年度は、その証明の重要な一ステップだった tin can argument と呼ばれるものを精密化することにより、ホースシュー領域の境界の b=0 における傾きが 9/8 以上 23/8 以下になることが示せた。この証明には、複素力学系の手法以外にもパラメータ空間におけるシュヴァルツの補題や精度保証計算などを組み合わせることによって得られる。以上の傾きの評価を慶応大学の高橋博樹氏によって得られていた最近の結果と組み合わせることによって、いわゆる first tangency を持つヘノン写像のある不変測度を(不変測度の空間の上での)変分法的な形で特徴付けることに成功した。より具体的には、絶対温度を0度に近づけたときの平衡状態の弱収束極限としてえられる任意の平衡測度がリヤプノフ指数を最小化しており、さらにリヤプノフ指数を最小化するような測度のうちで測度論的エントロピーを最大化しているということが証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複素力学系的手法の応用については順調に進展している。その一方で、Hubbard tree に対して不変量を構成するという課題は、いくつか不変量になる候補を見付けたのだが、それらはすべて本質的に次数に一致してしまい、位相共役類を分類するのには役立たないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Hubbard tree に対する不変量の構成については、有限型サブシフトの場合の Williams の論文を注意深く分析しそこでの議論を活用することで、更に精密な不変量の発見へと繋げる。複素ヘノン写像の相空間とパラメータ空間との関係については、まずそのモデルとして2次多項式族の場合に、ホースシューモノドロミー群とジュリア集合の対称性に関する予想が見出せたので、その解決に力を注ぐ。
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Causes of Carryover |
この差額は分担者の浅岡氏の分担金である。本来は27年度中に北大の荒井氏と九大の石井をそれぞれ一回ずつ訪問する予定であったが、時間的な制約から実現できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度中に北大の荒井氏と九大の石井をそれぞれ一回ずつ訪問する予定である。
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Research Products
(3 results)