2015 Fiscal Year Annual Research Report
離散関数解析と変分理論からなる差分法の基礎理論構築
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25287030
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
降籏 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (80242014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 宇泰 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90293670)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造保存数値解法 / 偏微分方程式 / 差分法 / 変分理論 / 離散変分導関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の第三年度は研究計画書および交付申請書に記載した目的および実施計画に沿って研究を推進した. 主たる最初の目的は一次元領域空間に限定して離散ノルムとそれによって自然に導出される離散関数空間、例えば離散ルベーグ空間や離散ヒルベルト空間、離散ソボレフ空間の定義を与えてその数学的な性質を調べることである.それらの離散関数空間の上で成り立つコーシー-シュワルツ不等式やソボレフ不等式などの微積分不等式の離散化を行うこと、部分積分などの変分理論の計算基盤を離散化すること、そしてさらにこれらを介して積分汎関数や変分導関数などの主な概念を離散化することが次の目的である. これらについて本計画研究者二人は前年度までの研究内容を引き続き推進する形で研究を進め、基本的な差分作用素が構成する離散関数空間において、対称性を失わないある中心差分作用素の族に対して作用素同士を変換する差分変換行列の概念を用いて離散ソボレフ不等式などの一般的な微積分不等式の性質が統一的に証明できること、そしてさらにそれらを成立させる数学的条件などについてさらに研究を進めた.証明の技法に関する研究を通じて、この議論に含まれる数学的な制約の本質の理解が進み、この理解によって、われわれはこの性質がわずかな数学的修正を通じて、より広い関数空間で成り立つと予測した.そしてこの点についてさらに調査をすすめるとともに、計算機による数値実験によって補助的な確認を行う準備を進めている. また、予定通り偏微分方程式の数値解析を含む応用数学に関する専門家が集まる国際研究集会 SciCADE (International Conference on Scientific Computation and Differential Equations) および ICIAM (International Congress on Industrial and Applied Mathematics)に て研究発表を行い、研究交流をすすめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の項目で述べているように、研究成果については独自の内容で当初の研究計画以上の成果を得ている部分もあり、全般としてはほぼ当初計画に沿った進展が見られると考えられる. そして、主たる国外招聘研究者の都合で初年度から第二年度、つまり平成26年度、へ予定を変更した国際研究集会を構造保存解法に対する研究交流のために数値解法の専門家が集まる研究集会 KCNADE (Kyoto Conference on Numerical Analysis and Differential Equations) として平成26年の夏に無事に主催、運営し、国内外から多くの専門家を招待、講演をしてもらうとともに自分らも研究発表を行い研究交流をすすめることも出来た. また、平成27年度に本計画研究者二人が応用数学の専門家が集まる国際会議 SciCADE (International Conference on Scientific Computation and Differential Equations) および ICIAM (International Congress on Industrial and Applied Mathematics)に て研究発表を行い、研究交流を推進したことは予定通りである. これらにより本研究の研究成果、実績について当初の計画からの大きなずれは無く、本達成度としてみずから評価するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は以下の計画を主に行う.まず,計画前年度までの調査と研究の結果をうけ、引き続きさらに研究を推進する. 特に明確になってきたこととして離散ヒルベルト空間などに比して連続ソボレフ空間の性質は離散化によって失われてしまうことが多いため、これによって目的とする微積分不等式が成立するための数学的制約が厳しくなる.この困難の克服を目指すことを主として丁寧に研究を続ける.少なくとも差分変換行列にもとづいて一定の機械的な理論展開が可能であることが判明しつつあるため研究をこの方向に沿ってすすめる. また、連続な変分理論が基礎におく極限操作を離散系では導入できないため、所与の条件下で厳密な等号の成立をさせることで数学的な曖昧さを排除する.これはもちろん極限操作に基づく議論よりも数学的には困難であり離散系の理論発展の障害となっているが、この点こそがわれわれの本課題の本質的な挑戦の対象である. さらに三次元、四次元など、より高次元の領域を対象としての研究も推進する.次元が上がると多面体の単体分割にまつわる数学的性質の幾つかが失われることより、離散微積分局所則の適切な提案が困難になる.これについては変分などに一定の制約をおくことで回避可能と考えられるため、変分原理の離散化を通じてこうした提案を試みる. そして、前年度までと同様に積極的に国際研究集会などに参加、講演を行い、これらを通じて他の専門家と知見の交換をはかる.具体的には日本応用数理学会や日本数学会などの国内での毎年の年会への参加、講演発表に加え、平成29年には数値計算等における応用数学者の集まる国際研究集会 SciCADE が開催されるため、これらに参加して講演を行うものとする.
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Causes of Carryover |
初年度に主催、運営を予定していた国際研究集会 KCNADE の予定が主たる招聘研究者らの都合により第二年度、すなわち平成26年度にずれ込んだため、それをうけて購入予定であったワークステーションの購入をより計画後期年度に移行したため、おおよそワークステーション一台分程度の次年度使用額が生じることになったものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先に述べた研究実績と推進方策に沿って以下のように使用する計画である. 先も述べたように、数学的な証明で保証される以上に離散的な微積分局所則が一定の範囲で成り立つとわれわれは予測しているが、これをなんらかの形で確認する必要がある.これには数式処理による計算支援と予備数値実験が大変重要であるため、ワークステーションの確保とその上で動作するソフトウェアのライセンス料等に研究費をあてる.また、変分理論については関数解析の専門家や有限要素法の専門家との共同研究が適切であり,このための研究集会開催の費用や旅費等を計上する.またこれも先に述べたように、平成29年には数値計算等における応用数学者の集まる国際研究集会 SciCADE が中国で開催されるためこれらに参加、講演を行い、多くの知見を得ることを目的として予算を振り分ける.
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Research Products
(9 results)