2014 Fiscal Year Annual Research Report
広域銀河サーベイ観測と数値宇宙論の融合による宇宙進化の解明
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25287050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90377961)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙物理学 / 銀河形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は重力レンズ宇宙論、銀河形成と分布、初代星形成について順調に研究をすすめることができた。特に、観測データを用いた解析も開始することができ、研究計画の主要部では着実に成果をあげている。そのため今後の展望をより具体的にすることができた。 はじめに、すばるHSCサーベイなど、進行中あるいは計画中の宇宙論サーベイによって宇宙の平均密度など主要な宇宙論パラメータを決定する手法を開発し、実際に既存の観測データに適用した。はじめに多数の重力レンズシミュレーションを行い、統計解析に必要な共分散行列を非線形計算から直接求めた。高次統計量を用いて宇宙の平均密度と密度ゆらぎの振幅に対する制限を加え、将来の観測では統計誤差をきわめて小さくすることができることを示した。次に、ダークマターの性質にせまるため、Fermi衛星によるガンマ線背景放射と重力レンズ観測を組み合わせ、ダークマター粒子対消滅断面積に制限を加えた。これは宇宙大規模構造をもちいた初めての制限である。 さらに、宇宙の大規模構造を定量的に評価するため、数学者と協働し、銀河分布の特徴を記述する新たな手法を開拓し、SDSS観測データと比較した。ドジッター計量を用いて空間泡構造のサイズ分布を正確に再現した。 初期宇宙での星形成の研究も大きくすすんだ。従来の研究では種族III星の形成時に周辺の星や銀河からの紫外光は考慮されていなかったが、我々は大領域の宇宙論的シミュレーションを行い、1500以上ものガス雲サンプルに対して、紫外線照射のもとでの種族III星形成過程を明らかにした。紫外線による水素分子解離のため、ガス雲は収縮中に高温に保たれ、その中心に生まれる星は非常に巨大になる可能性をしめした。さらに、微量の金属原子およびダストが存在する星間ガスから星が生まれる様子の計算をおこない、低質量低金属量星の形成過程の一つのモデルを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数学者との協働作業により、幾何学の手法を宇宙大規模構造の定量化に適用するなど、計画時にはなかった研究もすすんだ。また、低金属量星形成については理論的研究を主体に計画していたが、最近の広域サーベイにより発見された金属欠乏星の形成モデルについて、一世代前に超新星爆発にまでさかのぼってモデルを構築することまで可能になり、現実的な計算を行って観測結果と比較できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度には、すばるFMOSサーベイの観測データを用いて修正重力理論の検証を行い、また銀河形成シミュレーションでは星形成銀河に特化した輝線放射モデルを構築する。この研究ではALMAに提案中のサーベイを念頭に、遠方銀河探査の新たな手法を提供する。重力レンズ宇宙論の研究では、すばるHSCサーベイの初年度の観測結果を使うことができるため、暗黒物質対消滅断面積に新たな制限を加える。 初期宇宙での星形成については初代銀河の形成、特に初期ブラックホールの形成理論を発展させ、最近発見されたような早期の超巨大ブラックホールの形成モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
雇用していた研究員が他大型プロジェクトの研究員として転出した。年度途中でもあり、すぐに適切な人材を手配することができなかった。予算は12ヶ月雇用の予定で計画していた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に新たな研究員を雇用し、当初の計画どおりの給与で12ヶ月雇用する。
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Research Products
(13 results)