2015 Fiscal Year Annual Research Report
広域銀河サーベイ観測と数値宇宙論の融合による宇宙進化の解明
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25287050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90377961)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙物理学 / 重力レンズ / 銀河サーベイ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は宇宙の構造形成に関する理論的研究と大規模シミュレーションをさらに進めるとともに、広域銀河サーベイ観測の実データを用いた宇宙論解析を行った。はじめに、すばるHSC重力レンズサーベイのために統計解析精度の検証を行った。星間ガスを含めた流体シミュレーションを行い、バリオン物質が重力レンズ統計におよぼす影響を明らかにし、宇宙論パラメータ測定の際のバイアスを初めて定量的に示した(大里ら 2015)。 次に、多数のN体シミュレーションを用いて全天重力レンズマップおよびガンマ線マップを生成した。後者はダークマター粒子が対消滅する理論モデルを想定し、対消滅断面積に宇宙論的制限を与えるために生成した。SDSSサーベイにより同定された明るい銀河の位置と、Fermi衛星によるガンマ線背景放射の相互相関を計算し、銀河のホストハローを構成するダークマターからの対消滅シグナルに制限を与えた(白崎ら 2015a)。また、全天模擬重力レンズマップを作成し、銀河団の分布から修正重力理論に制限を加える方法を提案した(白崎ら 2015b)。 さらに遠方銀河に関する研究で大きな進展があった。昨年度の成果により、銀河形成の流体シミュレーションの結果に基づくと波長88ミクロンの強い酸素輝線が期待され、電波望遠鏡ALMAで検出可能であると提唱した(井上ら, 2014, ApJ). 実際に ALMA cycle2 の観測を行い、高赤方偏移銀河からの酸素輝線を検出した。 最後に、遠方超新星探索を実際にすすめた。すばるHSCの画像データに機械学習を適用し、差分画像の解析から50個の遠方超新星候補を検出した。機械学習を含む手法についての論文(森井 ら 2016)を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広域銀河サーベイについては、数値シミュレーションの実行、統計解析精度の見積もりから実データ解析まで研究期間中に行うことができ、目標は達せられたと考えている。特に重力レンズサーベイとガンマ線背景放射の解析からダークマター対消滅断面積に制限を与え、また銀河赤方偏移サーベイの結果から宇宙の構造成長率を測定し、修正重力理論モデル等に制限を加えた。流体シミュレーションの結果から、サブミリ波による遠方輝線銀河の探索を提唱し、実観測に結び付けた。 遠方超新星探索については、理論テンプレート整備などは遅れたものの、平成27年度内にすばる望遠鏡により観測、候補天体の検出まで行い、データ解析法やアプリケーションを含め、今後のより大規模な観測のための基盤整備を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
重力レンズサーベイとダークマターの性質に関する研究では、すばるHSCサーベイ1年目のデータをはじめとし、今後5年間で実データ解析をすすめる。ダークマターの対消滅断面積についてより強い制限を与え、銀河団周りの質量分布から修正重力理論モデルに制限を与える。マイクロ波で検出される銀河団と銀河分布の相関をとることで、銀河内ガスの温度や密度プロファイルなどを特定する。 遠方銀河探索については、今後は銀河形成シミュレーションを用いて遠方銀河からの遠赤外輝線フラックスを計算し、ALMA電波望遠鏡による観測との比較、および追加観測提案を行いたい。最遠方の銀河の重元素量や星形成率を決定する。 また超新星探索に関しては、COSMOS領域と呼ばれる、2平方度程度の領域内にある銀河をターゲットとしたモニタリングを続けており、光度関数のテンプレートフィットから超光度超新星の候補を探索中である。分光観測による超光度超新星同定に結び付けたい。
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Causes of Carryover |
遠方銀河探索について、電波観測による重元素輝線に関する大きな進展があり、酸素や炭素の輝線を発する最遠方天体の候補を複数発見した。当初期待した以上の成果が得られつつあり、追観測や追理論シミュレーションを行い、発見を確定したい。続けて大きな成果が期待されるため、次年度も同研究を継続したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに発見した輝線候補天体を確定するため、追観測や追理論シミュレーションを行う。このため国内で研究打ち合わせを開催し、その旅費に用いる。またシミュレーションデータ可視化と格納のためにハードディスクを購入する。
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Research Products
(14 results)