2016 Fiscal Year Annual Research Report
Massive gravityとその宇宙論への応用
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25287054
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 昌英 東京工業大学, 理学院, 教授 (80383511)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Massive gravity理論においては、helicity 0モードは必ず二階の微分項を伴って現れます。このような高階微分項は一般にはhelicity 0モードにもう一つの自由度、つまりOstrogradsky ghostを出すことが知られていますが、Massive gravityにおいては、その相互作用項がGalileon 項と呼ばれる特殊な組み合わせになるために、運動方程式が二階に留まりghostが現れません。それでは、より一般に、どのような場合に高階微分が存在するにも関わらずghostが現れないのか、という疑問が生じます。これはMassive gravity理論の拡張にも関係する問題です。まず、点粒子を扱う解析力学の場合において、一階微分のみを持つ系と二階微分まで持つ系が混在する場合において、Ostrogradsky ghostが存在しない条件をかなり一般的に求めました。二階微分まで持つ粒子が一つの場合には、運動項を表す行列が(一階微分から成る系の運動項は非縮退であると仮定して)縮退していることが、Ostrogradsky ghostが出ないための必要十分であることが分かりました。一方、二階微分まで持つ粒子が複数の場合には、さらなる条件を課す必要があることが分かり、一つの十分条件を与えました。さらに、これらの条件が満たされている場合には、運動方程式を二階の微分方程式まで落とせることを示しました。また、さらなる拡張も行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年提唱されたMassive gravity理論がなぜghost自由度を出さずに安定であるかの理解が着実に深まってきているから。
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Strategy for Future Research Activity |
Tensor(helicity2)揺らぎについて、reference metricやStuckelberg場の形に依存した有効質量が出てくるため、宇宙背景放射のゆらぎに大きな影響を与えることが期待されます。例えば、通常のmassless gravitonの場合には、一旦ホライズンの外に出るとfrozenするため、振幅はほとんど変わりませんが、massive gravityでは有効質量がハッブルより大きくなるとテンソル揺らぎが減衰振動を始め、振幅が減衰することが予想されます。グラビトンに質量がある場合の宇宙背景放射(温度及び偏極)の非等方性の予言は、このMassive gravity理論が提唱される前に、現象論的にグラビトンに質量を導入することにより調べられています。そこで得られている解析的及び数値的手法を応用することにより、諸々の具体的な宇宙論解に基づいてテンソル揺らぎによる宇宙背景放射の非等方性の予言を行い、観測結果との比較からグラビトンの質量やreference metric及Stuckelberg場の性質についての情報を抽出します。
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Causes of Carryover |
計画を実行するのに必要なポスドク研究員を最終年度まで余裕を持って雇うために少しずつ経費の使用を控える必要があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポスドク研究員の雇用経費として使用予定。
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